小熊猫の活動エリアに来ると、子供たちはみんなガラスの柵の下に身を乗り出し、ガラス越しに中を覗き込んでいました。
「あれ?小熊猫はどこに隠れちゃったの?見えないわ」予寧は顔全体をガラスに押し付け、一生懸命中を覗き込みました。「お兄ちゃん、見えた?」
予安はちらっと見ただけで、首を横に振り、また妹に視線を戻しました。
「予寧ちゃん、小熊猫は木の上にいるわよ」岡田詩織が二人の後ろに来て言いました。「見える?」
「木?」予寧は首を精一杯伸ばしました。「見えないわ、私、背が低すぎて見えない」
「おいで、先生が抱っこしてあげるから、そうしたら見えるわよ」岡田詩織は優しく言って、腰をかがめて予寧を抱き上げようとしました。
「いいの?」予寧は素直に言いました。「岡田先生、見えなくても大丈夫だよ。大きくなったら見られるし」
「大丈夫よ、先生が抱っこしてあげる」岡田詩織は予寧の体をつかんで持ち上げようとしましたが、予安がまだ予寧の手を握っていることに気づきました。「予安くん、予寧ちゃんの手を離してね。先生はあなたたち二人を一緒に抱っこできないわ」
予安はためらいました。彼はお母さんに妹をしっかり守ると約束したので、妹の手を離すわけにはいきませんでした。
「予安くん、いい子だから、予寧ちゃんの手を離して」岡田詩織はもう一度言いました。
予寧は予安を見下ろして言いました。「きっとお兄ちゃんも見たいんだよ。岡田先生、お兄ちゃんを抱っこしてあげて。私はもういいよ」
彼女はそう言って降りようとしました。
岡田詩織は歯ぎしりしながらも、予寧を抱いたまま手を離さず、予安に向かって言いました。「予安くん、言うことを聞いて。まず予寧ちゃんに見せてあげて、予寧ちゃんが見終わったら、今度は先生があなたを抱っこしてあげるわ」
予寧は予安を見て言いました。「お兄ちゃん、私が先に見てもいい?」
「気をつけて」予安はそう言ってから、やっと名残惜しそうに予寧の手を離しました。妹が本当に小熊猫を見たがっていることがわかったからです。
大丈夫、彼は妹のそばにいて見守る、妹が小熊猫を見ても危険はないはずです。
しかし、岡田詩織は予寧を抱くとすぐに横に移動し始め、しかもとても速く歩きました。「あそこよ、見える?」