韓家から出てきた真理子は、佐藤霞の家には行かなかった。
さっきから彼女は考えていた。岸下藍子が山ぶどうを口にした時の驚いた様子、岸下おばさんがコメの団子や栗、クルミを手に取って喜んでいた様子、今年初めて見たと言っていたことから、昨日霞兄妹が山の幸を持ち帰った時、佐藤家は近所に分け与えなかったのだろう。
真理子は霞兄妹がケチだとは思わなかった。おそらく秋田おばさんが言ったように、物が家に入るとすぐに大人に管理され、彼らが自由にできなかったのだろう。
このような物資が乏しい時代では、どんな食べ物も貴重で、何か手に入れるとすぐに隠す人も多く、責めることはできない。
だから、真理子が霞の家に行かなかったのは、自分が岸下家に物を届けたことで彼らを困らせたくなかったからだ。
彼女はただ恩返しをしただけで、他人には関係ないことだった。
佐藤家の庭で、強志は門柱の後ろに隠れ、岸下家から出てきてこちらへ歩いてくる真理子を盗み見ていた。
彼はさっきから飛び出して真理子を捕まえ、半殺しにして、彼女の目も見えなくしてやろうと思っていた。鳳の仇を取るために!
しかし彼の父親はそれを止め、そうすることを許さなかった。
佐藤国松はこう強志に説明した。「真昼間だぞ、前回のように彼女が叫んだら大勢の人が来るだろう。それに鳳の一件もあるし、わざと彼女を傷つけたとすぐにわかる。そうなれば非は我々にある。彼女がいつ私と母さんの話を盗み聞きしたのかもわからないし、実の子ではないという話を村中に広めたら、村中がそのことを知ることになる。今となっては簡単に彼女を傷つけるわけにはいかない。おじいさんとおばあさんは彼女を宝物のように扱っている。もし二人の老いぼれが追及してきたら、私たちは刑務所行きだ!母さんの考えでは、ゆっくりと真理子をなだめて、結局私たちも11年間彼女を育てたんだし、誰だって親や兄弟姉妹が欲しいだろう?将来彼女が嫁ぐとき、実家という後ろ盾が必要だろう?まずは我慢して、いい顔をして、彼女を連れ戻し、それから『事故』を装って彼女を不自由にする...そうすれば多くの面倒が省ける!」
強志はうなずいて理解したことを示し、さらに尋ねた。「じゃあ、母さんと鳳はいつ帰ってくるの?」