黒田俊均は黒曜石のような瞳で真理子を深く見つめ、三和光太に手を伸ばした。
三和光太は黒田俊均に軍用ナイフを渡した。黒い牛革の鞘から刃を抜くと、冷たい光が放たれ、その鋭さが想像できた。
「妹さん、もう一度チャンスをあげよう!」
俊均は助手席に座り、後部座席の真理子に向かって言った。真理子は黒田俊鎮と大崎健太に挟まれていたが、彼女は微笑んで答えた。「本当に結構です。解き方なんてわかりませんから!」
俊均はそれ以上何も言わず、片手で黒曜石の札を持ち、もう片方の手でナイフを握り、ドアの方に向かって茶色がかった黄色の紐を切ろうとした。三和光太は運転席に座っていたが、特に気にして見ていなかった。彼と俊均は数え切れないほどの危険な任務を一緒に遂行してきた。時には周囲に気づかれないよう、ナイフを使って音もなく敵を排除することもあった。光太が思うに、俊均のような刀の達人が一本の紐を切れないはずがなかった!
しかし俊均はなぜかもたもたして、最後には振り返って言った。「実は、このお札はかなり良い感じだ。少し惜しいから、とりあえず持っておこう!部隊では少し注意すれば、見つかることはないだろう!」
皆が呆然としたが、真理子だけは相変わらず落ち着いていた。
毛糸のように細い紐は柔軟で弾力があり、刃が全く効かなかった。火で燃やしても駄目で、電気溶接刀やレーザーなら可能かもしれないが、紐は俊均の首に結ばれていた。彼が正気を失ったか、生きることに飽きたのでなければ、そんな方法を試すはずがなかった!
そしてレーザーについては、70年代の中国ではまだそのレベルに達していなかっただろう。仮にあったとしても、使えば人々の注目を集めることになる。俊均がそんなリスクを冒すとは考えにくかった。
とにかく彼も認めた通り、少し注意すれば、この玉でできたお札は隠せるのだ!
俊均が真理子の贈り物を受け入れた以上、もう何も言うことはなかった。皆は車の中で黙って座り、誰も声を出さなかった。
約10分後、三和光太と黒田俊鎮、大崎健太が車から降り、俊均はジープで真理子を乗せて出発した。目的地は市の中心部にあるデパートだった。
子供でさえ初対面の贈り物を知っているのだから、大人の俊均が「礼には礼を」の道理を知らないはずがなかった。