田原邸に戻ると、スタッフは田原おじいさんの指示通り、すでに薬湯を一鍋煮ておいてくれていた。真理子が昨日調合した薬は、三回分の薬湯に使えるものだった。
田原青山は真理子を手伝って大きな木の桶いっぱいに薬湯を用意し、田原おばあさんを中に入れて30分ほど浸からせた。
田原おじいさんは、深褐色の湯気が立ち上る薬草の清々しい香りが漂う熱い湯に、頭だけを出して浸かり、気持ち良さそうに唸っている田原おばあさんを見て、とても羨ましそうにしていた。我慢できずに真理子に自分も薬湯に浸かりたいと言うと、真理子は反対せず、田原おじいさんと田原お父さんの脈を診て、薬湯用の薬と体調を整える薬丸を調合することを約束した。すべて今夜中に作るつもりだと言った。
青山は自ら助手を買って出た。真理子は断りきれず、リストを作って薬店で材料を買ってきてもらうことにした。ついでに薬丸や軟膏を入れる陶器の小瓶も買ってくるよう頼んだ。
これは青山を困らせた。「旧正月の初日で、しかも夜だぞ。どこの薬店が開いているんだ?」
田原おじいさんが助け舟を出した。「病院に漢方薬局があるだろう」
青山はヒントを得て、出かけていった。
田原お父さんが見ていないうちに、真理子は急いで空間から薬材を取り出し、準備作業に取り掛かった。まずは田原おばあさんの内服薬と薬湯用の薬材を調合し、それから田原おじいさんと黒田家の長老、青山のための薬湯用の薬材も用意した。
さらに簡単に作れる二種類の薬丸も作っておき、夜に部屋に戻って空間に入ったら、もっとたくさん作るつもりだった。空間の小さな楼閣には薬房があり、道具も揃っているので、薬丸や軟膏などを作るのに便利だった。
田原おばあさんが薬湯に十分浸かったのを見て、真理子は彼女が上がるのを手伝い、きれいなお湯で洗い流してから、服を着せて出てきた。祖父と孫と父の三人はリビングで少し話をした後、真理子は台所に行って麺を茹で、三人で分けて食べた。そして田原おばあさんに薬を飲ませてから、彼女を部屋に送って休ませた。病状は良くなったとはいえ、まだ弱っているので、養生と休息に気をつける必要があった。