第196章 十分

翌日、空がほんのり明るくなり始めた頃、一晩ベッドで寝ることもできず、お腹には何も入っていない田原雅子は、ほとんど力尽きそうになりながらも、必死に椅子から立ち上がり、よろめきながら数歩歩いて、安部鳳英を起こしに行った。学校へ連れて行ってもらうためだ。彼女はもう一分たりともこの家にいたくなかった。

鳳英は雅子を心配して、「先に朝ご飯を食べたら？」と言ったが、雅子はすぐに吐き気を催した。彼女は誓った：この家の食器には、絶対に触れないと！

鳳英は長女のこの様子を見て、申し訳なさと悲しさでいっぱいだったが、どうすることもできなかった。彼女にはもう手立てがなかったのだ。すべては貧しさのせいで、子どもたちには良い暮らしをさせてあげたいと思っていたのに！

この時の雅子の姿は確かにひどいものだった：額、鼻、上唇はまだ赤く腫れており、さらにパンダのような目の下のクマがあって、まるで外国のサーカス団の道化師のようだった。

彼女は都会で育ったため、農村にも診療所があることを知らなかった。顔の傷について、鳳英は本来なら村の診療所に連れて行って消毒薬を塗るべきだったが、1、2元のお金を惜しんで、傷が深くないから、タバコの灰を塗れば数日で治ると考えていた。

実を言えば、雅子は適応力がかなり強かった。もし都会の田原家にいたなら、鉛筆を削っている時に手に少し傷がついただけでも、大騒ぎして病院に行くような子だった。しかし田舎に来て、この荒廃した環境に怯えていた彼女は、こんな恐ろしい場所に良い医薬品があるとは信じられず、かえって顔に傷が残るのではないかと恐れていた。だからタバコの灰さえ鳳英に塗らせなかった。病院に行きたいとは思ったが、鳳英が車がないと困った様子で言うと、雅子はそれ以上言わなかった。田原家のように、いつでも呼べばすぐに車が迎えに来るような贅沢を期待することはできないだろう。