二見玲香は慌てて携帯を背中に隠した。「私、私の友達が……」
田口義守は彼女の様子を見て、さらに疑いを深め、一歩前に出て携帯を奪おうとした。
田口艶子は急いで言った。「お父さん、どうしてそんなことするの?」
「私がどうしたって!」田口義守は激怒した。「見てみろ、彼女の様子は明らかに後ろめたいじゃないか!お金はどこに行った?きっと彼女が持ち出して何か人に見せられないことをしたんだ!」
田口艶子は二見玲香を見た。「お母さん!何か言ってよ!一つの電話くらい、出てお父さんに聞かせればいいじゃない!」
しかし二見玲香はどうしても携帯を出そうとせず、立ち上がって自分の部屋に向かおうとした。
彼女のその様子を見て、田口艶子も少し疑い始めた。
田口義守は二見玲香の腕をつかんだ。「後ろめたくないなら、なぜ逃げる!」
「誰だってプライバシーくらいあるでしょ!」二見玲香は泣きながら言った。「あなたを裏切るようなことはしていないわ!」
「していないなら携帯を出せ!」田口義守は怒鳴った。
携帯の着信音が止んだ。
二見玲香がほっとしたのもつかの間、2秒もしないうちに、また携帯が鳴り始めた。
二見玲香の顔色が再び変わるのを見て、田口艶子も何かおかしいと感じた。「お母さん、一体どうしたの?何かあるなら言ってよ、家族みんなで解決策を考えるから。」
田口義守は素早く携帯を奪い取った。
二見玲香は悲鳴を上げ、飛びかかろうとした。
田口義守はすでに通話ボタンをスライドさせ、男の声が聞こえてきた。「もしもし?」
田口義守は頭上に緑の角が生えたような気分になり、不機嫌に言った。「あなたは誰だ?二見玲香に何の用だ!」
相手は数秒間黙った後、言った。「二見って誰?これは武井幸利の電話じゃないの?」
「武井幸利?」田口義守も驚いた。彼は携帯を見て、着信が番号だけで名前の登録がないことに気づいた。「あなたは二見玲香を探しているんじゃないのか?」
「すみません、間違えました。武井幸利を探しています。」
言い終わると、相手は電話を切った。
二見玲香は密かにほっとした。
しかし田口義守はそう簡単には納得しなかった。「間違い電話一つで、なぜそんなに緊張する?」