第361章 本当のことを言うか嘘を言うか

岡田羽一のその冷たくてかっこいい顔が、目の前にあった。

田村若晴は呆然とした。

男は窓を閉め、冷たい目で田村若晴を見つめた。「公共の場では、喫煙禁止だ」

田村若晴は我に返り、顎をしゃくって壁の標識を示した。

そこには「喫煙所」と大きく書かれていた。

岡田羽一はそれを見ても何の反応も示さず、無表情のまま言った。「タバコは健康に悪い」

田村若晴は口元を歪めて笑った。

彼女は岡田羽一の目に何の感情の変化も見ることができなかった。その視線は冷たく、彼女のような美人に対しても全く動じなかった。

田村若晴はあえてもう一度深く煙を吸い込み、そして大胆にも目の前のその顔に向かって吐き出した。

煙が立ち込め、岡田羽一のかっこいい顔を覆った。

しかしすぐに、煙が消え、その顔が再び現れた。

淡いタバコの香りと女性の身体から漂う微かな香りが混ざり、岡田羽一に向かって押し寄せた。

そしてすぐに消えていった。

何も残らなかった。

ただ微かな香りだけが残り、彼が嗅いだことのない香りだった。

田村若晴は手を上げてタバコを隣の灰皿に押し付け、岡田羽一を見ることなく、大きなウェーブのかかった髪を振り、ハイヒールでカツカツと歩いて行った。

岡田羽一はその場に残り、動かなかった。

しばらくして、彼は手を伸ばして鼻に触れ、眉を上げ、口元を歪めて笑った。

田村若晴は部屋に戻る前に、口にガムを入れることを忘れなかった。

田口優里は匂いに敏感で、まるで小さな家政婦のように、いつも熱心に彼女に禁煙を勧めていた。

実際、田村若晴は自分がたまに一本吸うだけで、健康に全く害はないと思っていた。

彼女が喫煙することを知っている人は少なく、それは彼女にタバコの依存症がないからでもあった。

しかし彼女が個室に戻ると、やはり田口優里に見抜かれてしまった。

田口優里は顎を支えて彼女を見つめ、軽くため息をついた。「今日はとても様子がおかしいわね。一体どうしたの?私に話せないことがあるの?」

田村若晴はガムをティッシュに吐き出してから言った。「別に何でもないわ、ただ...以前話した一目惚れした理想の男性、覚えてる?」

「覚えてるわよ!」田口優里はすぐに興味を示した。「また会ったの?前に言ってたじゃない、もし再会したら縁があるから追いかけるって」