第362章 私には彼氏がいます

松下牧野は人々を連れて中に入り、言った。「時間は限られていましたが、この家具はすべて最高の素材で、ホルムアルデヒドは含まれていません。優里ちゃん、あなたがいつか泊まりに来たいなら、いつでも大丈夫ですよ」

田村若晴は笑いを堪えるのに肩が震えていた。

野井北尾は思わず田口優里を見た。

田口優里は無理に笑って言った。「この色は…」

「色はどうですか？」松下牧野は手柄を自慢するような口調で言った。「女性はみんな好きでしょう？以前、沙梨もピンク色が好きだったと記憶しています！」

田口優里は思い出した、亀山由美はピンク色が好きだった。

でも彼女がピンク色を好きだったのは、装飾や配色としてのピンク色で、ほんの少しあれば十分だった。

この部屋は、目に入るものすべてがピンク色だった。

このセンスは…

本当に言葉にしがたい。

好きかと言われれば、おそらく数歳の女の子ならこの雰囲気を好むかもしれない、自分がお姫様のような気分になれるから。

でも彼女はとっくにその年齢を過ぎているのに。

松下牧野は後になって気づき、田村若晴と野井北尾の表情を見て、思わず恐る恐る尋ねた。「優里ちゃん、あなた、もしかして気に入らないですか？」

「気に入りました」田口優里は即座に答えた。「気に入りました、ありがとうございます」

なぜか、彼女は松下牧野がこのような落胆した気持ちを見せるのを見るのが耐えられなかった。

それに、どう言っても、これは彼が心を込めて準備したものだ。

田口優里は、礼儀の観点からも、この部屋が良くないとは言えないと思った。

田口優里が気に入ったと聞いて、野井北尾の口角がピクリと動いた。

以前の3年間の結婚生活で、家のすべては田口優里が配置していた。

野井北尾は彼女の好みのスタイルが、シンプルで上品なものだと知っていた。時々可愛い小物やクッションなどを買っても、それは装飾に過ぎなかった。

彼は田口優里がこのようなピンク一色のスタイルを好むとは知らなかった。

田村若晴は田口優里をよく理解していて、彼女が「気に入った」と言ったのは、ほとんど礼儀からだと知っていた。

しかし松下牧野にはそれが分からなかった。

彼はずっと女性はみんなピンク色が好きだと思っていた。

以前は遊園地もピンク色に塗り替えると言っていた。