最初、田口義守は気にしていなかった。
この数年間、二見玲香は彼の側で温厚で優しく、夫を支え子供を教育する女性像を懸命に演じていた。
むしろ、その姿は田口義守の心に深く刻まれていた。
彼は一度も、二見玲香が自分を裏切るようなことをするとは思っていなかった。
そして、この数年間、二見玲香は常に彼の耳元で枕元の風を吹き込んでいたが、田口義守は家の財政権を手放すことはなかった。
しかし二見玲香はそれほどお金を使う場面も多くなく、彼女に対して田口義守はケチというわけでもなかった。
だからこの期間、二見玲香がお金を使う場面が突然増えたことで、田口義守はまた余計な想像をし始めた。
彼はこっそり人を使って二見玲香を尾行させたが、彼女が外出して会う相手は確かにすべて奥様方だった。
田口義守は疑いを捨て、二見玲香が本当に誠心誠意この家のために努力していると感じた。
彼はかなり喜んでいた。
しかし二見玲香は喜べなかった。
彼女は人の心が貪欲であることを知っていた。
しかし彼女は、人の心がここまで貪欲になれるとは知らなかった。
彼女のように、かつて家が貧しく、一人で子供を育て、日々の暮らしは楽ではなかった。
田口義守と一緒になってから、生活環境はかなり改善された。
しかし彼女はすぐに満足できなくなった。
人々から指をさされる愛人の立場に満足できなくなった。
彼女は田口さんになりたかった。
堂々と田口義守の側に立ちたかった。
しかしそれはすべて、まったく不可能だった。
亀山由美の存在は、彼女にとって肉中の棘、目中の刺だった。
亀山由美が一日でも生きている限り、彼女は永遠に田口奥さんになることはできなかった。
あの頃、彼女はまだ夢を抱いていて、何気なく田口義守に離婚する可能性について尋ねたことがあった。
その時の田口義守の眼差しは、彼女が一生忘れられないものだった。
田口義守の眼差しはまるで、何を馬鹿げたことを言っているのかと言っているようだった。
離婚?ありえない。
だから、その時から二見玲香は、自分のすべての優しさが亀山由美の指一本にも及ばないことを知った。
田口義守に期待するのは不可能だった。
彼女は自分自身に頼るしかなかった。
最終的に、彼女の夢は実現した。
ついに田口家に入り、田口義守の結婚証明書上の妻となった。