映画館を貸し切ったのは、数枚の写真を撮るためだけだった。
奥田梨子はため息をついた。金持ちの悪行だ。
映画を見るというデートの任務はこれで完了し、川木信行は彼女をレストランへと連れて行った。
レストランには個室があったので、貸し切る必要はなかった。
奥田梨子は慣れた様子で彼の写真撮影に協力し、撮り終わるとすぐに小さなハンドバッグを持って立ち去った。
川木信行は奥田梨子が急いで去っていく背中を冷ややかに見つめ、眉をひそめた。
彼は携帯をしまい、後でデートの写真を祖母に送るつもりで、立ち上がり、個室を後にした。
テーブルには既に注文した料理が並んでいた。
二人とも箸をつける気はなかった。
奥田梨子が個室を出ると、思いがけずレストランで畑野志雄に出会った。
彼は今日、黒いスーツを着ていて、とても正式で、十分に高貴な雰囲気を醸し出していた。
そして彼の隣に立っている女性はレディライクなドレスを着て、肌がとても若々しく見える女性だった。
その女性の雰囲気はとても静かで上品だった。
畑野志雄も奥田梨子を見つけ、二人の視線が空中で交わった。
彼は奥田梨子の後ろについてくる川木信行を見て、さりげなく視線をそらした。
奥田梨子は唇を引き締めて軽く微笑み、曲がり角を曲がって、先にトイレに行くことにした。
彼女がトイレから出てくると、偶然にも男子トイレから出てきた畑野志雄とまた会った。
彼女は素直に挨拶した。「畑野さん」
挨拶を終えると、彼の前を通り過ぎようとした。
「奥田梨子」畑野志雄はまぶたを上げ、のんびりと言った。「黒いレースの下着が見えているよ」
彼の声はそれほど大きくなかった。
周りにも人はほとんどいなかった。
その言葉が彼女の耳に入ると、雷が鳴り響いたようだった。
轟く雷が彼女の頭を割るように感じた。
奥田梨子は反射的に頭を下げて自分の下半身を見た。
彼女は「……」
今日彼女はぴったりとしたジーンズを履いていた。前にジッパーがあるタイプだ。
今、ジッパーはお腹の肉に押されて完全に閉まっておらず、悲劇的なことにジッパーがゆっくりと下がり、小さな隙間ができていた。
彼女が中に着けていたレースの下着が少し見えていた。
奥田梨子は耳を真っ赤にし、頭から煙を出すように女子トイレに駆け戻り、ジッパーを上げた。