第16章 彼女は顔を赤らめた

映画館を貸し切ったのは、数枚の写真を撮るためだけだった。

奥田梨子はため息をついた。金持ちの悪行だ。

映画を見るというデートの任務はこれで完了し、川木信行は彼女をレストランへと連れて行った。

レストランには個室があったので、貸し切る必要はなかった。

奥田梨子は慣れた様子で彼の写真撮影に協力し、撮り終わるとすぐに小さなハンドバッグを持って立ち去った。

川木信行は奥田梨子が急いで去っていく背中を冷ややかに見つめ、眉をひそめた。

彼は携帯をしまい、後でデートの写真を祖母に送るつもりで、立ち上がり、個室を後にした。

テーブルには既に注文した料理が並んでいた。

二人とも箸をつける気はなかった。

奥田梨子が個室を出ると、思いがけずレストランで畑野志雄に出会った。

彼は今日、黒いスーツを着ていて、とても正式で、十分に高貴な雰囲気を醸し出していた。