映画館を貸し切ったのは、数枚の写真を撮るためだけだった。
奥田梨子はため息をついた。金持ちの悪行だ。
映画を見るというデートの任務はこれで完了し、川木信行は彼女をレストランへと連れて行った。
レストランには個室があったので、貸し切る必要はなかった。
奥田梨子は慣れた様子で彼の写真撮影に協力し、撮り終わるとすぐに小さなハンドバッグを持って立ち去った。
川木信行は奥田梨子が急いで去っていく背中を冷ややかに見つめ、眉をひそめた。
彼は携帯をしまい、後でデートの写真を祖母に送るつもりで、立ち上がり、個室を後にした。
テーブルには既に注文した料理が並んでいた。
二人とも箸をつける気はなかった。
奥田梨子が個室を出ると、思いがけずレストランで畑野志雄に出会った。
彼は今日、黒いスーツを着ていて、とても正式で、十分に高貴な雰囲気を醸し出していた。