飛行機の中で、山田江輔は頭を回して医学書を読んでいる男に尋ねた。「どうして急に広口市に行くことになったの?」
行くなら行くで、なぜ彼を連れて行くのだろう?
「患者の手術をしに行くんだ。」
ついでに人に会いに行く。
「いや、兄弟、お前が患者の手術をしに行くのはわかるけど、俺を連れて行って何をさせるつもりなんだ?」
それこそが問題点だ。
畑野志雄はCAからコーヒーを受け取り、お礼を言ってから山田江輔の質問に答えた。「お前が行けば役に立つさ。」
山田江輔は畑野家の御曹司でも対処できない何かがあって、自分の出番があるのかと一瞬喜んだ。
しかし、畑野志雄の言う「役に立つ」とは、彼を配達員にするということだった。
毎日配達員として、食べ物や飲み物を奥田梨子という女性に届けるのだ。