第173章 人質

「BOSS、奥田さんはすでに出発しました。私たちの者が彼女を迎えに行っています」木場左近はエレベーターのボタンを押しながら敬意を込めて言った。「現在、我々の人間は森田綺太側の脱出経路をすべて封鎖しています」

エレベーターのドアが開き、ボディーガードが車椅子を押してエレベーターに入り、木場左近もそれに続いた。

木場左近は実のところ、今回の畑野志雄のここへの訪問に賛成していなかった。体調が回復していないのに、何が起こるか分からないからだ。

森田綺太側がこの期間、警戒して勢力を整えていたため、今回は彼らが先手を打つしかなかった。

同時に。

畑野志雄に成りすましていた森田綺太は、自分の勢力が一網打尽にされたという知らせを受けた。

森田綺太は顔色を曇らせて立ち去ろうとしたが、山田青子に止められた。「畑野さん、畑野おじさんがあなたを探しています」

彼が目の前の女性を押しのけようとした瞬間、左耳に付けていたBluetoothイヤホンから奥田梨子の話す声が聞こえてきた。

彼はそれを聞き終えると、ゆっくりと口元を歪めて冷たく笑った。

畑野志雄がまだ生きているとは。

なるほど、これで自分の勢力が一網打尽にされた理由が分かった。

森田綺太は山田青子に近づき、「休憩室で少し話しましょうか?珠美、抱かせてくれる?」

山田青子は目の前の「畑野志雄」を見つめ、顔を少し赤らめた。彼が畑野珠美を抱きたいと言うのを聞いて、喜んで子供を彼に渡した。

森田綺太は微笑みながら手を伸ばして子供を受け取り、山田青子の腰に手を回した。「行きましょう、休憩室へ。奥田梨子も気づかれないように休憩室に招待する方法はありますか?」

この時、山田青子は呆然としていた。畑野さんが彼女の腰に手を回すなんて?

楽田彩香たちは奥田梨子が去った後、畑野志雄が山田青子と親密にしている様子を見て、「........」

とても衝撃的だった。畑野志雄はずっと社交界のお嬢様たちが追いかける男性だったのに、彼はプライベートでこんなにだらしないのか?

山田青子はうなずいた。「電話して奥田梨子を休憩室に案内してもらいます」

彼女は携帯を取り出して岸本綾華に電話をかけた。

一方、奥田梨子は畑野志雄が送った人と一緒にエレベーターで1階に到着していた。

彼女が1階に着くと、賀来蘭子からの電話を受けた。