第258章 新しい番号

「うちの社長はいい人だよ。ちゃんと自分の仕事をきちんとこなして、口が堅ければ大丈夫だ」

寿村凱は運転しながら、助手席の若い男に言い聞かせた。

岡部俊雄はうなずいて微笑み、無害な笑顔を見せた。「はい、先輩。安心してください、僕は口が堅いです」

「......」

寿村凱はますます不安になった。

岡部俊雄は寿村凱の後輩で、同じ指導教授の下にいた。その教授が強く岡部を寿村凱に推薦したのだった。

奥田梨子はリビングで寿村秘書を待っていた。今日、彼女は新しく購入した家に引っ越す予定だった。

賀来蘭子はぶつぶつと言った。「梨さん、私と一緒に住めばいいのに。二人で過ごせば楽しいのに」

奥田梨子は賀来蘭子の髪を撫でた。「あなたたちの邪魔はしないわ」

彼女がここに住んでいたら、手塚星司と賀来蘭子が話し合うのも不便だろう。

しばらくして、寿村凱は岡部俊雄を連れてリビングに入ってきた。

「こちらが私たちの社長、奥田さんです」と寿村秘書は紹介した。「社長、こちらは私の後輩の岡部俊雄です。今後、あなたの個人秘書を務めます」

奥田梨子と賀来蘭子は互いに顔を見合わせ、そして同じく驚いている若い男性を見た。

「......」

二人の心に同時に浮かんだ考え、世界は本当に狭い。

目の前の岡部俊雄は、飛行機の中で自己紹介して奥田梨子に話しかけてきた男だった。

岡部俊雄は明るい笑顔を見せ、すぐに腰を曲げて敬意を表して言った。「社長、はじめまして。岡部と呼んでください。今後、あなたが任せるどんな仕事も一生懸命こなします」

奥田梨子は岡部俊雄をじっくり見た。

岡部俊雄は奥田梨子の視線に気づき、軍事訓練のようにピンと背筋を伸ばして立っていた。

奥田梨子は後で寿村秘書に個人的に、岡部俊雄は彼女の個人秘書として適していないと伝えるつもりだった。

岡部俊雄も奥田梨子が彼を雇いたくないと考えていることを察したようで、口を開いた。「社長、どうか一度チャンスをください。私の能力は一人で十人分の仕事ができます」

寿村秘書は飛行機での出来事を知らず、奥田梨子が男性を個人秘書にしたくないのだと思った。

彼は指導教授の強い推薦を思い出し、助け舟を出した。「社長、一ヶ月の試用期間で、彼が適していなければ、別の人を探します」

奥田梨子は実は岡部俊雄の洞察力に驚いていた。