長い年月を経て、再び奥田梨子に会った葉山麗奈の目には、複雑な感情が一瞬よぎった。
彼女は身を翻して立ち去り、携帯を取り出して川木信行に電話をかけた。「信行、食事の場所を変えましょう。ヴェインタのレストランの料理はあまり好きじゃないわ」
電話の向こうで川木信行が答えた。「もう君が見えているよ」
川木信行は電話を切り、ちょうどそこで食事をしている奥田梨子に視線を向けた。
奥田梨子も川木信行を見かけたが、見なかったふりをした。
賀来蘭子は呆れて、川木信行たちに出くわすとは思わなかった。「梨さん、このフォアグラ美味しいわよ、試してみて」
葉山麗奈は川木信行の側に歩み寄り、手にしていたバッグを彼に持たせ、冷ややかに鼻を鳴らした。「行きましょう、ここは美味しくないわ。どうしてこんなに遅れたの?」