第292章 よし、よし!

「木場秘書、畑野志雄はどこに行ったの?」

奥田梨子は木場左近が持ってきた昼食を食べながら、静かに尋ねた。

彼女は病気になっていたが、畑野さんについての彼女の理解では、彼は朝に出かけたまま姿を見せないということはないはずだった。

きっと何かが起こったのだろう。

木場左近は手を上げて額に触れた。彼はどう切り出すべきか考えていた。

もし話したら、奥様の体調がまた悪化し、そして社長が不在だとなれば、大変なことになる。

奥田梨子は木場左近にすぐに答えるよう強制しなかった。彼女は自分に昼食を七分目まで食べるよう強いてから、ようやく箸を置いた。

どんな状況であれ、まずは体を回復させなければならない。

木場左近は素早く食器を片付けた。

奥田梨子はようやく顔を上げて木場左近を見た。「話して、遠慮しないで」

木場左近をこれほど躊躇させるものは、おそらく大事件だろう。

木場左近は恭しく奥田梨子に一杯の水を注ぎ、それから言った。「社長は警察署にいます。しばらくそこにいる必要があります」

奥田梨子の白い指がコップを軽くこすった。「何があったの?」

木場左近は奥田梨子を一瞥し、目を伏せた。「高橋金治郎という美容整形医を捕まえました。社長は彼が...黛子さんに整形手術をしたのではないかと疑っています。ただ疑いだけで証拠がないため、良くない手段を使ってしまいました」

奥田梨子は瞬時に恐ろしい眼差しで木場左近を見つめ、一言一言噛みしめるように尋ねた。「結果は?」

木場左近は心の中でため息をついた。彼はバッグからタブレットを取り出し、黛子さんが整形後にどう見えるかをシミュレーションした写真を表示し、両手で奥田梨子に渡した。

「現時点では整形の傷が回復した後の具体的な姿はわかりません。これは高橋金治郎の説明に基づいて調整した術後の可能性のある姿です」

今、あの男はおそらく黛子さんを連れてどこかに隠れ、顔の整形傷が回復するのを待っているのだろう。

この種の整形は、術後に注意しないと感染を起こし、重症の場合は命に関わることもある。

これらの状況は、木場左近も、畑野志雄も、奥田梨子も知っていた。

奥田梨子の指は微かに震えながら画面上の写真に触れた。

見知らぬようで、それでいて見覚えのある小さな顔が彼女の目に映り、彼女の心は瞬時に締め付けられた。