平田町の警察署を出て、奥田梨子と畑野志雄は奥田黛子の祖父が撮影した映像に映っていた通りへ向かった。
彼らは通りの両側の店に尋ねて回った。
畑野志雄が今回連れてきた人たちは皆、散らばって聞き込みを始めた。
「こんにちは、昨日この映像に映っている小さな女の子を見かけませんでしたか?」畑野志雄はスマホを店主に見せた。
「見ていないね」店主は首を振った。
「ありがとうございます」
畑野志雄は奥田梨子の車椅子を押して別の店へ向かった。
二人は続けて何軒かの店を回った。
ようやく小さな麺屋で少し情報を得ることができた。
店内には今お客さんはいなかったが、女将さんは声を潜めて小さく言った。「この男の人がこの小さな女の子を連れて昨日店に来て、麺を食べていました。女の子はひどく空腹だったようで、手づかみで麺を食べていました」
彼女はその時特に何も考えず、父親に愛されていない子なのだろうと思っていた。
目の前の雰囲気の良い男女を見て、あの子は誘拐されたのではないかと思った。
奥田梨子は痛みを感じる目をまばたきした。
彼女の娘が手づかみで麺を食べていた。
そんな光景を想像すると、胸が痛んだ。
畑野志雄は車椅子のハンドルを握る手に力が入り、手の甲の血管が浮き出ていた。
通りで一日中聞き込みをしたが、小さな麺屋の女将から少しの情報を得ただけだった。
夜は平田の小さなホテルに泊まった。
奥田梨子は畑野志雄と娘のことについて話し合った。
「畑野さん、あの時海の中に潜水艦があったのではないかと思います」奥田梨子が突然言った。
それはつまり、森田綺太の仲間がまだいるということかもしれない。
畑野志雄は顔を曇らせ、奥田梨子を抱きしめた。「彼らは内部で森田が残したものを奪い合っているのかもしれない」
そして彼らの娘は森田が設定した条件の一部である可能性が高かった。
奥田梨子は目を閉じ、深く息を吸い、心の不安を落ち着かせようとした。
彼女が再び目を開けた時、その目には決意が戻っていた。「明日はきっといい知らせがあるわ、必ずあるはず」
畑野志雄は彼女の手を握り、冷たくなった指を唇に当てて軽くキスをした。「必ず娘を見つけるよ」
二人は一晩中目を閉じて眠ることはなく、誰も眠れなかった。