第085章：久保清森、あなたは本当に憎らしい

エレベーターの中の雰囲気は、なぜか一気に気まずいものとなった。

幸い、すぐにエレベーターはロビーに到着した。

古川真雪が先にエレベーターを出て、堂々とした姿勢で前を歩いていく。

彼女がホテルのロビーを通り過ぎると、ホテルマネージャーが恭しく近づいて彼女と久保清森に軽く頭を下げた。「古川様、久保さん、お見送りいたします。外は大雨ですので、お気をつけてお帰りください」

真雪は礼儀正しくマネージャーに微笑みかけた。「ありがとうございます」

「どういたしまして」

マネージャーの言った通り、外は大雨が降っていた。耳元を吹き抜ける風には、身震いするほどの冷たさが混じっていた。

真雪は、まだ肩にかけていた清森のスーツの上着をきつく寄せた。彼女が運転席に向かって足を踏み出そうとしたとき、彼女の横で長い間黙っていた清森が突然手を伸ばして彼女の手首をつかんだ。

彼女は眉をひそめて清森の方を見ると、彼は穏やかな口調で言った。「送っていくよ」

そう言いながら、清森は真雪の手を引いて彼女の車の助手席へと連れていき、ドアを開けて目で中に入るよう促した。

真雪は最初抵抗しようと思ったが、冷たい風があまりにも厳しく、清森を拒否すればまた言い争いになるだろうと思い、二秒ほど考えた後、彼女は妥協して助手席に座った。

車がホテルの庇の下から出ると、強風と雨がフロントガラスと窓を絶え間なく叩いた。

先ほどシャンパンが体にかかったせいで、真雪の体からのアルコールの匂いがますます強くなっていた。彼女は不快そうに眉をひそめ、横にいる清森をちらりと見た後、また眉を緩め、シートの背もたれに寄りかかって視線を窓の外の豪雨に包まれた街へと向けた。

「父が亡くなった夜も、外はこんな大雨だった。私は一人で救急室の外に座って、あなたに何度も電話をかけ続けた。でも電話の向こうからは、あなたの携帯の電源が切れているというメッセージばかり。それでも私は何度も何度もかけ続けた。心の中であなたが電話に出てくれることを願いながら」

真雪が突然口を開いた。彼女の口調は、まるで流れる水や砂のように平静で、何の感情も読み取れなかった。