第020章：目の前にあるのは絶好の機会

綾部子遠が投資に同意しなかった理由は、おそらく久保清森に知らせずに勝手に古川真雪のアイデアを支援することで、清森の不満を買うことを恐れていたからだろう。

だから昨日、真雪との電話を切った後すぐに、子遠は清森にこの件について連絡した。

清森はもちろん綾部の投資を許可するつもりはなかった。なぜなら...彼は真雪と関わる機会が必要で、今がまさに絶好の機会だったからだ。

「何ですって？」

真雪は信じられないという表情で、自分が幻聴を聞いたのではないかと疑っていた。

彼女の驚いた表情に清森は面白くなり、軽く口角を上げながら、とても辛抱強く自分の言葉を繰り返した。「投資してもいいよ」

言葉が落ちるや否や、真雪はソファから勢いよく立ち上がった。彼女は手を伸ばして赤らんだ頬を軽く叩きながら、独り言のように言った。「私、絶対に酔ってるわ、酔ってる」

そう言いながら、彼女は携帯を手に取り、清森を通り過ぎてリビングを出て行った。

ソファに座ったままの清森は思わず笑ってしまった。

彼はこれまでどうして真雪がこんなに変わった人だと気づかなかったのだろう？

真雪は今夜自分が飲みすぎて酔っているから、あんな不思議な幻聴が聞こえたのだと固く信じていた。

だから部屋に戻ると、洗面を済ませてさっさとベッドに潜り込み、眠る準備をした。

眠りにつく前に、彼女はベッドサイドテーブルの上の携帯を手に取り、WeChatを開いて、先ほど清森から送られてきた2つの音声メッセージを再生した——

「真雪、外は雨が強くて帰れそうにないから、今夜は君の家に一晩泊めてもらおうと思う。もう玄関の前にいるから、ドアを開けてくれないか」

「今パスコードを試したら、ドアのロックが解除されたみたいだ。1分後に君が止めなければ、自分で入るよ」

真雪は苦笑いしながら携帯を置き、清森の今日の一連の異常な行動に非常に困惑していた。

しかし、すぐに眠気が襲ってきて、彼女は清森のことを考えるのをやめ、深い眠りに落ちた。

……

翌日、真雪が目を覚ますと、清森はすでに彼女の家から出ていた。

彼女は昨夜の清森との会話を、酔った状態で見た幻覚だと思い込み、まったく気にしていなかった。