昨夜よく眠れなかったせいで、昼寝をしたら夕方まで寝てしまい、ドアベルの音で目を覚ました。
古川真雪はベッドサイドテーブルからタブレットを手に取り、監視カメラを開くと、ドアの外に久保清森の姿が見えた。
彼女は携帯の機内モードを解除し、清森に電話をかけた。
タブレットの画面で、清森がスーツのポケットから携帯を取り出し、着信を確認すると、薄い唇に優しい笑みが浮かんだ。
彼は画面をスワイプして電話に出た。「もしもし、真雪」彼の声は澄んでいて、とても心地よかった。
「うん、何かあった?」
電話の向こうから真雪の少しぼんやりとした声が聞こえ、少し色っぽい怠惰さを帯びていた。
彼女の声は羽毛のように彼の心を軽くくすぐり、彼は眉を少し上げて冗談めかして言った。「君からかけてきたんじゃないの?」
「あなたが私の家の前に立っているから、何かあるのかと思って」
清森はようやく気づき、少し顔を上げてカメラに向かって魅力的な笑顔を見せ、片手に携帯を持ちながら、もう一方の手で熱心にカメラに向かって手を振った。
彼のおどけた笑顔と仕草に真雪は思わず微笑み、赤い唇に浅い弧を描いた。
清森は手を下ろしながらもカメラに向かって笑い続け、真雪の質問には答えず、代わりに優しい口調で尋ねた。「ご飯食べた?」
「まだよ」
「お腹すいてる?」
「ちょっとね」
「降りてきてドア開けてよ、料理するから」
真雪は少し躊躇い、数秒後にようやく口を開いた。「何を作るつもり?」
「トマトミートソースのパスタ」
言葉が終わるか終わらないかのうちに、電話から真雪が布団をめくる小さな音が聞こえた。「今すぐドア開けるわ」
彼女の反応に清森は静かに笑い、続けて言った。「前菜はマッシュルームの肉詰め焼きはどう?」
真雪は階段を降りながら答えた。「いいわね、ちょうど家にマッシュルームがあるし」
「デザートは?」
「冷蔵庫に昨日焼いたクレームブリュレがあるわ」
「了解」
清森は携帯を持ちながら、向こうから聞こえる足音を聞いていると、数秒後、目の前の閉まったドアが開き、見慣れた小さな顔が現れた。
彼は手に持っていた携帯を切り、真雪が彼を招き入れるのを見た。「どうぞ」