「でも……この数日間、久保会長が毎日レストランに来ているのは、あなたに会うためじゃないの?」
「違うわ、彼はただ食事にたかりに来てるだけよ」
越智均策がさらに何か聞こうとしたが、彼が口を開く前に、古川真雪は彼の注意をそらした。「そろそろ時間ね、退勤しましょう。明日の開店セレモニーに備えて、しっかり休んでね」
「はい、わかりました。では明日お会いしましょう、店長」
レストラン内のスタッフは次々と退勤し、真雪は暇を持て余して、軽い食べ物を用意し、焼酎を温め、バーカウンターに座って一人で飲み始めた。
焼酎を半分ほど飲み干したとき、彼女の耳に軽い足音が聞こえ、そして軽くからかうような声が響いた。「どこにいるのかと思ったら、ここで一人酒か」
「どうしてここに?」
「パートナーとして、君と一緒に祝杯を上げるのは当然だろう」
清森はバーカウンターを回り込み、中からグラスを取り出した後、再びカウンターの外側に戻り、真雪の隣に座った。
真雪は酒瓶を手に取り、彼のグラスに酒を注ぎ、自分のグラスを軽く持ち上げた。
おそらく少し酒が回ったせいだろう、彼女の人を惹きつける桃花眼には淡い霞がかかり、一挙手一投足に色気が漂っていた。
彼女は軽く笑い、柔らかな口調で言った。「乾杯、パートナー」
「繁盛を祈って」清森は自分のグラスを持ち上げ、彼女のグラスと軽く合わせた。
「うん」
一杯の酒を飲み干した後、真雪は突然尋ねた。「雑誌を三万冊買ったって聞いたけど?」
「ああ」
「次に本当にお金を持て余したら、直接振り込むか現金をくれればいいわ」
その言葉には清森の行動に対する不満が滲んでいた。あの派手な愛の表現は感動的に見えるかもしれないが、実際にはとても幼稚だった。
好きという気持ちは二人だけの、プライベートなことであり、それをわざわざ表に出して皆に見せるのは、どこか虚栄心を感じさせた。
清森は真雪の言葉の意味を理解できないはずがなく、素直に頷いた。「わかった、次回は気をつけるよ」
真雪は酒瓶に残った酒を全て清森のグラスに注ぎ、立ち上がってもう一本の焼酎を温めに行った。
彼女は清森の隣に座り、朦朧とした目でバーカウンターの棚に並ぶ様々な酒を見つめながら、「清森」と呼びかけた。
「ん?」清森は首を傾げて彼女を見つめ、その表情は水のように優しかった。