「そうね。ちょうど私も欠点が少なくないから、お互い補い合えるわね」
「補い合うのはいいけど、これからの協力関係がうまくいくことを願うよ」
つまり、恋人同士はやめて、ビジネスパートナーとしてやっていこうということだ。
久保清森は小さく笑い、彼女に自分を受け入れるよう迫ることはしなかった。古川真雪に何度も断られた経験から、彼は忍耐力を身につけていた。
彼女はかつて八年もの間彼を追い求め、ようやく念願叶って彼と結婚した。
彼が彼女を追いかけているのはわずか数ヶ月に過ぎない。彼女が彼を待った時間と比べれば、この数ヶ月など取るに足らないものだった。
明日の開店を控え、真雪と清森は二本目の焼酎を飲み終えると、片付けを済ませて帰ることにした。
……
おそらくアルコールの影響だろう、この夜、真雪はいつになく良く眠れた。
翌日、目覚まし時計が鳴る5分前に自然と目が覚めた。彼女は起き上がって身支度を整え、丁寧に化粧をし、簡単な朝食を済ませてから出かけた。
ドアを開けると、ちょうど彼女を訪ねてきた清森とばったり出くわした。
「こんな早くに、どうしたの?」
清森も出かけようとしている真雪に出会うとは思っていなかった。彼女の細い姿が不意に彼の視界に飛び込んできて、次の瞬間、その深い瞳に驚きの色が走った。
一着の赤いレースのドレスが彼女の優美な曲線を際立たせ、もともと白い肌が赤いドレスに映えて、より一層透き通るように見えた。
彼女はまるで華麗なバラのようで、明るい春の光の中で、優雅で気高く、あらゆる表情を見せていた。
「真雪、おはよう。今日は本当に綺麗だよ」
「ありがとう」
「今からレストランに行くの?」
清森は腕時計を見た。開店まであと2時間ある。彼女は早めに店に着いて準備をしたいのだろう。
「うん」真雪はうなずいた。
「駐車場まで送るよ」
真雪は反対せず、彼が自分の横を歩くのに任せた。
レストランの建物を購入してから今日の開店まで、真雪は宣伝やスタッフの採用以外、特に何もしていないような気がした。
むしろ清森が資金を出し、唐田浩良と家主との交渉を手伝い、デザイナーを探し、レストランの改装の進捗を確認し、営業許可の手続きなどを行ってくれた。