彼は指で画面をスライドさせて電話に出た。「もしもし、真雪。」
「先輩、すみません、さっきスマホのバッテリーが切れて勝手に電源が落ちてしまって。さっき誰かがどうしたって言ってましたか?」
中島黙は一瞬言葉に詰まった。さっきは古川真雪のスマホのバッテリーが切れたのかもしれないと思っていたが、まさか本当にそんな不運なことが起こるとは。やっと勇気を出して告白したのに、こんなタイミングで。
ただ、彼が確信できなかったのは、さっき自分が言った言葉を、彼女がどこまで聞いていたのかということだった。
そのため、彼は真雪の質問に直接答えず、少し慎重な口調で尋ねた。「さっき、俺が何を言ってるのを聞いてた?」
「さっき誰かがって言ってるところまで聞こえて、それから音が途切れました。スマホを見たらバッテリーが切れて電源が落ちてたんです。それで、さっき誰かがどうしたんですか?」
彼女の返事に、黙は心の中でそっと安堵のため息をついた。どこか彼女に自分の告白を聞かれなかったことに安心しつつも、少し落胆していた。
彼は気づいた。ほんの数分の間に、さっき振り絞った勇気がすべて消え去っていた。心の中の声が、真雪を静かに思い続け、彼女の邪魔をしないようにと告げていた。
今回も彼は真雪の質問に答えず、話題を変えた。「さっき忙しかった?」
「いいえ。」真雪は首を振り、ベッドの上で足を組んで座り、うつむいたまま、しばらくしてから再び口を開いた。「清森が私を訪ねてきたの。」
「あ、そうなの?」
「先輩。」
「うん。」
「私、まだ清森のことが好きみたい。」
本当はまだ久保清森のことが好きなのかどうか、この三日間、彼女は何度も自分に問いかけ、また何度も彼を好きではない理由を探していた。
しかし、どの理由も最終的には彼女の心の奥底から湧き上がる声によって否定されてしまった。
彼女はまだ清森を好きだった。十数年間追い続けてきたこの悪い男を。
彼女の心の内を聞いたとき、黙は太ももの上に置いていた左手をぎゅっと握りしめ、自分の感情をコントロールしようとした。
真雪がまだ清森を好きだということは、実は彼が戻ってきたばかりの頃から見抜いていた。