【ありがとう。】
吉田語春は古川真雪の親友だったが、かつて彼女と夫の結婚が成立した大きな理由は久保清森の助けがあったからだった。そのため、感謝の意を示すために、語春と彼女の夫は清森が真雪を取り戻す手助けをするのは当然のことだった。
翌日の朝、真雪は急な呼び鈴の音で目を覚ました。
彼女はスマホを手に取って確認すると、まだ9時前だった。誰がこんな早くに訪ねてきたのか分からなかった。
彼女はベッドサイドテーブルからタブレットを取り出し、監視カメラを開くと、意外にも玄関の前に語春の姿が見えた。
彼女は急いで布団をめくり、素足のまま階下に駆け降りて、突然訪れた語春のためにドアを開けた。
しばらくインターホンを鳴らし続けた後、やっと真雪が玄関のドアを開けると、語春は彼女の部屋着姿と洗面もしていない様子に驚いた目を向けた。
「私に起こされたの?」
真雪は遠慮なく頷いた。「そうよ」
語春は手首を上げて腕時計の時間をちらりと見て、遠慮なく皮肉った。「彼氏がいなくなって、こんなだらしない生活になっちゃったの?前だったらこの時間、もう朝の運動から帰ってきてるはずでしょ。だから言うわよ、早く清森と復縁したほうがいいわ」
語春はそう言いながら、真雪の横を通り過ぎて家の中に入っていった。
真雪は彼女の背中に向かって見苦しいほど白目をむいた。昨日から、清森との復縁という言葉が彼女の口癖になっているようだった。
「正直に言いなさいよ、清森があなたに何かいいことでもしたの?そこまであなたが熱心に彼のために良いことを言うなんて」
語春の表情が一瞬こわばった。彼女は真雪に背を向けたまま玄関で室内履きに履き替え、それから振り返って真雪に向かって明るい笑顔を浮かべた。
「冗談じゃないわ。私がどうして少しの見返りのために友達を売って清森のために良いことを言うなんてことするわけ?これは本当にあなたのためを思ってのことよ」
彼女は誠実な表情を精一杯作り、真雪に自分を信じさせようとした。
正直に言えば、彼女の演技力は確かに落ちていたが、真雪は起きたばかりで頭がまだぼんやりしていたため、語春の言葉の真偽を考える気持ちもなかった。
彼女は先にリビングへ向かいながら、口の中でぶつぶつ言った。「私のためを思うなら、若い男でも紹介してくれればいいのに」