久保清森は古川真雪がゆっくりと遠ざかる姿を面白そうに見つめ、それから足を進めて記者たちに囲まれている真雪の方へ向かった。
記者たちは戻ってきた清森に気づくと、自然と道を譲り、彼が真雪の前に立てるようにした。
「久保会長、古川様を追いかけているのですか?」
「お二人は復縁のご予定はありますか?」
二人とも記者の質問には答えず、ただ微笑みを浮かべてカメラを見つめ、一言も発せずに前へ進んだ。
うるさい記者たちから逃れた後、清森はさりげなく真雪を横目で見て、口元に優しい笑みを隠しながら、静かに尋ねた。「来ないかと思ってた」
「あなたがそんなに誠心誠意招待してくれたから、顔を出さないのは悪いかなと思って」
清森は何かを悟ったように頷いた。「ああ、つまり僕のために来たんだね。赤ちゃんに会いに来たわけじゃなくて」
真雪は言葉もなく、少し明るく、少し得意げに笑っている清森を横目で見た。彼のからかいに何も言い返せなくなっていた。
彼女は視線を戻し、清森が自分をからかい続ける機会を与えないよう、自然に話題を変えた。「投資の件はどう考えてる?」
「僕のことをそんなに気にかけてくれるなんて、意外だね」
真雪の足が急に止まった。彼女は再び言葉もなく、不真面目な清森を横目で見た。「清森、今朝薬飲み忘れた?」
彼女の嫌そうな言葉に清森は思わず笑った。薄い唇の端にゆったりとした奔放な微笑みを浮かべ、彼はいたずらっぽく目を細め、片手をスーツのポケットに入れ、もう片方の手を横に垂らしたまま、少し身を屈めて真雪の顔に近づいた。
瞬く間に、清森の顔が突然目の前で大きくなり、真雪の息は一瞬止まった。
「真雪」
静かな呼びかけは、まるで春風に溶け込む花の香りのようで、芳醇な香りが静かな空気の中にじわじわと広がっていった。
二人の距離が近すぎて、彼が口を開いた時、唇から漏れる温かい息が真雪の白い頬にかかり、次の瞬間、彼女の両頬に薄いピンク色が自然と広がった。
真雪は居心地悪そうに視線をそらし、少し後ろに下がった。「話があるなら言って」
清森は横に垂らしていた手を伸ばし、優しい動きで真雪の手を取った。