古川真雪の記憶が正しければ、夏目宣予が十七歳の時、福祉施設でボランティアをしていた際に、一つ年上の久保清森と出会った。
中村暖月と鎌田敬賢は福祉施設の子どもたちと一緒に絵を描くグループに配属され、彼女は子どもたちに対して非常に優しく親切な敬賢に一目で好意を持った。
何年も前、真雪は清森を誘って一緒に福祉施設でボランティアをしていた。当時、子どもたちと絵を描く任務はいつも真雪と清森が一緒に担当していたが、その日は真雪が病気で欠席し、新しいボランティアの宣予が彼女の代わりを務めた。
真雪はこれ以上読み進める気にはなれなかった。彼女は素早く小説を閉じ、これが宣予が彼女と清森との間の物語を小説に書き換えて出版したものだと理解した。
彼女の心の中にはうっすらと答えが浮かんでいた。誰が自分にこの小説をプレゼントとして送ったのかを。
彼女は小説をリビングのテーブルに投げ捨て、部屋に戻ると携帯を手に取り、宣予に祝福のメッセージを送った……【初めての小説出版おめでとう。内容はとても素晴らしかったわ。これがあなたの最後の出版作品ではないことを願っているわ。】
メッセージを送信した後、彼女は携帯をベッドに投げ、洗面所に行って身支度を整えた。
プレゼントを受け取ったのは真雪だけではなかった。野球帽をかぶった男性は真雪の家の前を離れた後、エレベーターで17階の清森の家へと向かった。
清森が箱を開け、中の本とその内容を見たとき、彼の顔は恐ろしいほど暗くなった。
彼は何気なく小説をゴミ箱に投げ入れ、部屋に戻ろうとした時、ふと思いついた。宣予が自分にこの本を送ったなら、真雪にも送っているのではないだろうか?
そう考えると、彼は何故か慌てた。服を着替える時間もなく、カジュアルな部屋着のまま、携帯を手に取り、ドアを飛び出した。
清森が真雪の家のドアベルを鳴らしたとき、真雪は身支度を整え、顔にシートマスクを貼っていた。
耳に届く連続したドアベルの音に、真雪はイライラしながら部屋に戻り、ベッドサイドテーブルからタブレットを取り、モニターを通して外に立っている清森を見ると、タブレットを置き、ゆっくりとした動きで階下に降りて清森のためにドアを開けた。
ドアが開くと、ドアの向こうの真雪の顔にはシートマスクが貼られ、キラキラした目と赤みを帯びた唇だけが露出していた。