言葉が終わるとすぐに、夏目宣予が口を開く機会を与えずに電話を切った。
彼は携帯をコートのポケットに戻し、ドアの前まで歩くと、古川真雪が既に車を玄関前に停めているのが見えた。
彼は車の周りを回って助手席のドアを開け、座り込むと「今日は少し暖かくなったみたいだね。真雪は何か食べたいものある?」と尋ねた。
「お粥。ついでに、あのお医者さんが言ってた水々しい女の子にも会ってみたいわ」
「君の隣には格好いいイケメンが座ってるんだけど、この顔じゃ満足できないの?」
真雪は嫌そうに清森を横目で見て、わざと返事をしなかった。
車内が突然沈黙に包まれ、清森は意図的に場を白けさせる真雪を面白そうに一瞥して、再び尋ねた。「どうしてそんなに協力的じゃないの?」
「ああ、どう返事していいか分からなかったから」
「ツッ、真雪は変わったね。前はこんな風に接してくれなかったのに」
「たぶん若すぎたのよ。幼くて分別がなくて、バカなことばかりして、バカなことばかり言ってた。気にしないで」
彼女の言葉は表面上は穏やかだったが、まるで以前彼を追いかけていたのは若くて分別がなかったからだと暗に示しているようだった。
清森は彼女の言外の意味に気づいていないふりをして、感慨深げに言った。「本当に懐かしいな、僕の後をぴょこぴょこついて回ってた古川ちゃん」
真雪は赤い唇を引き締め、前方の道路を見つめる目に、思わず深く読み取れない波紋が浮かんだ。
二人の間の会話は、彼女が再び沈黙したことで、ついに終わった。
車がお粥屋の前に着くと、真雪は車を停め、シートベルトを外して降りようとした時、突然何かを思い出したように、急いで清森に言った。「そうだ、優秀な弁護士を探してもらえる?」
清森は車のドアを開けて降り、ドアを閉めてから同じく車から降りた真雪を見て、「どうしたの?」と尋ねた。
「芸能スクープTVを訴えたいの」
「ああ、もう君の代わりに訴えたよ」少し間を置いて、「君の名前で」と付け加えた。
真雪は少し眉を上げた。「いつ?」
「君が家出した日だよ」
清森は真雪に言わなかったが、彼女が家出する前日、芸能スクープTVが彼女と中島黙が一緒に家を見に行ったというニュースを見た時、すでに唐田秘書に弁護士チームに芸能スクープTVを訴える準備をするよう指示していた。