眠気が襲ってきて、彼女はもう考えるのをやめ、深い眠りに落ちた。
……
古川真雪が朝ベッドから目覚めた時には、すでに10時だった。一晩眠った後、体調は明らかに良くなっていた。頭痛はなくなり、喉はまだ少し不快だったが、昨日ほど痛くはなかった。
彼女は起き上がって身支度を整え、服を着替えて部屋を出ると、ちょうど久保清森が隣の部屋から出てくるところだった。
目が合うと、彼は眉を少し曲げ、整った顔立ちに温かな笑みが広がった。
「真雪、おはよう。昨夜はよく眠れた?」
「うん、悪くなかったわ」
「良くなった?」
「ええ」
話している間に、清森はすでに一歩一歩と彼女に近づき、彼女の前で立ち止まった。
「これから一緒に朝食を食べて、町を少し散策してから帰ろうか」
「うん、唐田秘書は?」
清森は正直に答えた。「朝、大谷秘書が迎えに来て、先に帰ったよ」
真雪はうなずき、それ以上何も聞かず、先にエレベーターへ向かって歩き出した。
清森は2秒遅れて彼女の後ろについていき、彼女の足取りが軽く、元気そうな様子を見て、大したことがないと確認し、やっと安心した。
真雪はエレベーター前で待ちながら、バッグから携帯電話を取り出し、電源を入れた。
携帯は2日間電源が切れていた。電源を入れると、画面に清森からの5件の不在着信、中島誠輝からの2件、そして清森からの2件の未読メッセージが表示された。
【真雪、どこにいるの?探してるんだけど。】
【一言も言わずに出て行くなんて、元夫に一言も言わないなんて、これって家出?】
真雪は可笑しそうに横にいる清森を見て言った。「私たちの関係で、私がどこに行くにも報告が必要なの?」
「もちろんさ。私たちの関係は、当然特別だからね」
清森はわざと「私たちの関係」という言葉を強調し、真雪を見る目に悪戯っぽい笑みが浮かんでいた。
エレベーターがチンと鳴り、次の瞬間ドアがゆっくりと開いた。
真雪は空っぽのエレベーターに足を踏み入れ、SNSをスクロールしながら嫌そうに言った。「私たちの関係が特別なレベルになったなんて知らなかったわ」
「元妻と元夫の関係って十分特別じゃないか?」
「せいぜい普通よりちょっと下のレベルの関係でしょ」