第168章:あなたには使う資格すらない

「わかりました、お手数をおかけします」

長谷執事が顔を上げると、古川真雪がすでにリビングに来ていることに気づいた。彼は慈愛に満ちた笑顔を真雪に向け、丁寧に言った。「夏目さん、奥様がいらっしゃいました」

夏目宣予は長谷執事の言う「奥様」が白川悠芸だと思い込んでいたため、彼の言葉を聞いて急いで手に持っていたティーカップを置き、立ち上がった。

しかし、振り向いて優雅で端正な姿勢の真雪を見た瞬間、彼女の笑顔は凍りついた。

宣予は思わず口を開いた。「真雪、どうしてここにいるの?」

真雪が答える前に、厳かな声が彼女より先に響いた。

長谷執事は真雪の傍らに恭しく立ち、答えた。「夏目さん、若奥様はこの家の主人です。彼女がここにいないとしたら、どこにいるべきだというのでしょうか?」

彼の全身からは怒りを表さずとも威厳のある雰囲気が漂い、不思議と人に畏怖の念を抱かせた。

長谷執事の問いに、宣予は答えようがなく、ただ乾いた笑みを浮かべるだけだった。

真雪は長谷執事が自分の威厳を宣予の前で示そうとしていることを理解していた。彼女は宣予が持ってきた贈り物の一式に目を向けた。どれも高価な滋養品や収集価値のある書画だった。

真雪は前回、綾部久辰が開催した新年パーティーで、わざと宣予を挑発して久保家の長老に贈り物を持って訪問するよう仕向けたことを覚えていた。まさか本当に贈り物を持って訪ねてくるとは思わなかった。

真雪の視線が自分の持ってきた贈り物に注がれているのを見て、宣予は説明した。「これはおじさんとおばさん、それにお婆さんへの気持ちです」

「ありがとう、彼女たちに代わって受け取っておくわ」言い終わると、真雪は長谷執事の方を向き、丁寧に指示した。「長谷執事、お手数ですがこれらの贈り物をお片付けください」

「若奥様、どういたしまして。すぐに片付けます」

長谷執事は前に進み、宣予が持ってきた贈り物を一つずつ手に取り、リビングを後にした。

真雪は宣予の隣の長いソファに座った。家政婦が熱いお茶を彼女の前に置くと、真雪は小声で家政婦に感謝を述べてから顔を上げて宣予を見た。

「本当に言った通りに来るなんて、残念ながら時間を間違えたわね」真雪の宣予を見る目には嘲笑の色が浮かんだ。

すでに仲違いしている二人は、当然ながら友好的な外見を装う気もなかった。