第377章:私はあなたが好きです

古川真雪は彼の邪魔をしたくなかったので、本棚から一冊の本を選び、ソファに座って静かに読み始めた。

その間、彼女は何度か顔を上げて、デスクに座っている久保清森を見た。見るたびに、彼はいつも真剣で悩ましげな表情で考え込んでいた。

彼の表情の豊かさに真雪は面白さを感じ、笑いをこらえながら視線を戻して再び本に目を落とした。

ついに11時になり、デスクで1時間半近く座っていた清森はようやく重たげに持っていたペンを置き、手紙を折りたたんで封筒に入れた。彼は少し誇らしげな表情で、長い時間かけて書いた手紙を持って真雪の隣に座った。

真雪は手に持っていた本を閉じ、目の前のテーブルに置くと、隣で少し興奮気味に笑っている清森を横目で見て尋ねた。「書き終わった?」

清森はうなずいた。「うん、書き終わったよ」

「見せて」真雪は期待を込めて手を差し出し、清森が1時間半もかけて書いたラブレターを手渡してくれるのを待った。

「真剣に書いたんだ。うまく書けてなくても怒らないでね?」

清森の口調はやや慎重で、先ほど手紙を書き終えた時の誇らしげな表情も、今は緊張の色に取って代わられていた。

その様子はまるで期末試験の答案を提出する学生のようで、不安げだった。

真雪は可笑しくなってうなずき、約束した。「絶対怒らないわ」

それを聞いて、清森はようやく勇気を出し、手に持っていた封筒を真雪の差し出した手のひらに置いた。

12年間で初めて清森からラブレターをもらうのだから、期待と興奮を感じないはずがなかった。

真雪が封筒を開けようとした時、清森は突然ソファから立ち上がった。「ちょっとキッチンに行ってくるよ。先に読んでて」

真雪は手を振って、行ってもいいと合図した。

清森の口元にはかすかな悪戯っぽい笑みが浮かび、大股で書斎を出て行った。

真雪は封筒を開け、中から手紙を取り出した。手紙には清森の爽やかで流麗な字が書かれていた。

【愛しい真雪へ、

あなたと知り合って12年、こうして落ち着いて手紙を書くのは初めてだ。伝えたいことはたくさんあるけど、重要なことだけ選んで書くよ。

この数ヶ月間、あなたと復縁したこの数ヶ月は、おそらく人生で最も幸せな時間だった。