第376章:君の願いは私からのラブレターを受け取ることなの?

よく考えてみると、二人が交際を始めてから、彼女はほとんど料理をしていなかった。ほとんどの場合、久保清森が食事を用意し、彼女はただ食べるだけでよかった。

「うん、わかった。これは私の誕生日のお祝いを前もってしてくれるの?」

清森は軽く笑いながら首を振り、優しい声で答えた。「去年は君の誕生日を一緒に過ごせなかったから、これは去年の分の埋め合わせだよ。」

「364日も遅れたけど、こんなに心のこもった夕食を準備してくれてありがとう。」

「新しい誕生日が来る前に、叶えたい誕生日の願い事はある?」

真雪は眉尻を少し上げ、口の中でつぶやいた。「願い事?」

「うん。」

真雪には特に急いで実現したい願い事はなかったが、やりたいことはいくつかあった。少し考えた後、彼女は答えた。「山に登りたいな。」

「この時間に山登りは安全じゃないよ。また今度一緒に行こう。他に願い事はある?」

真雪は軽くまばたきし、長いまつ毛が蝶の羽のようにひらひらと動いた。

まつ毛の下に隠れた星のように輝く瞳に悪戯っぽい笑みが浮かび、数秒後、彼女は再び口を開いた。「清森が私に書いたラブレターが欲しい。」

過去数年間、彼女は清森に多くの手紙やラブレターを書いたが、彼からの返事を実際に受け取ったことは一度もなかった。もし前回、彼女が偶然に書斎で自分が昔書いたそれらの手紙を見つけていなければ、それらの手紙はもう存在していないと思っていただろう。

だから、彼女は清森に自分宛てのラブレターを書いてほしかった。

彼女の願い事は清森の予想外のものだった。彼の表情は一瞬固まり、それから少し驚いて不確かな様子で確認するように言った。「君の願い事は、僕が書いたラブレターが欲しいということ?」

「うん。」真雪はうなずいた。彼女の優しい笑顔には真剣さが込められていた。

清森はこれまでの人生で数え切れないほどのラブレターを受け取ってきたが、どの女性にもラブレターを書いたことはなかった。真雪の要求に少し驚きながらも、彼は甘やかすように答えた。「わかった。」

「ちゃんと書いてね。下手だったらネットに投稿して、ネットユーザーに誤字や変な文を探してもらうから。」真雪の口調は、まるで小学生の作文を監督する教師のようだった。

清森は思わず笑い、素直に答えた。「わかりました、女神様。」