しかし、彼が次に言った言葉は古川真雪をさらに激怒させるものだった。「間違いじゃない。俺は完全に意識がはっきりした状態で、お前を抱きたいと思ってる」
真雪:「……!」
エレベーターのドアがカチンという音を立てて、ゆっくりと開いた。
真雪は久保清森に握られていた手を振り払い、足早にエレベーターを出た。心の中では清森の厚かましさに対する文句が山ほど溜まっていた。
清森は彼女の後ろについてエレベーターを出た。二人が曲がろうとしたとき、突然年配の人影とぶつかりそうになった。隣人の大谷さんだった。
真雪は恐怖で目を見開き、突然現れた大谷さんを見つめた。これから何が起こるか、すでに分かっていた。
大谷さんは老眼鏡を鼻の上で押し上げ、ゆったりしたバスローブを着た真雪を見ると、慌てた様子で叫んだ。「おやおや、なんてこった。こんな白昼堂々と、何をしようというんだね。古川ちゃん、見てごらん、その服装の乱れ方、まったく...私で良かったものの、もし団地の子供たちが見たら、どれだけ悪い影響を与えることか」
真雪は思わず口角を引きつらせながらも、礼儀正しく大谷さんに挨拶した。「おはようございます、大谷さん。私はこれで失礼します。良い一日をお過ごしください」
そう言って素早く自分の家に向かって歩き出した。
しかし、数歩進んだだけで、大谷さんが心配そうな口調で言うのが聞こえた。「そんな堕落した姿では、私がどうして良い一日を過ごせようか。ああ、久保さん、言いたくはないが、君たちのそういう行為は団地の風紀に非常に悪い影響を与えるよ」
「はい、はい、おっしゃる通りです。今後は必ず改めます。お邪魔しませんので、良い一日を」
大谷さんに適当に返事をした後、清森も彼の横を通り過ぎ、真雪の家へと向かった。
真雪が無事に家に着いたことを確認してから、彼は自分の家に戻った。
真雪はレストランの昼休みの時間になってようやく店に到着し、スタッフと一緒に食事をした後、オフィスに戻った。
副支配人の越智均策は真雪に話したいことがあったため、彼女の後ろについてオフィスに入った。
真雪はバッグをデスクに置き、目の端で横のソファを見た瞬間、昨夜彼女と清森がそのソファで楽しんだ光景が脳裏に浮かんだ。