彼は急いでポケットから携帯を取り出し、唐田浩良に電話をかけた。
先ほど久保清森が慌ただしくオフィスを出て行った時、唐田浩良は古川真雪が父親の墓参りをしている際に、墓地で偶然夏目維順に出会ったことが原因だと理解していた。
そのため彼は夏目維順を監視している者に連絡を取り、相手は夏目維順が今日確かに外出したが、墓地には行かず、近くのスーパーで少し買い物をしただけで家に戻ったと伝えてきた。
清森から電話がかかってきた時、浩良はすぐに電話に出て、敬意を込めて自分の知っていることをすべて報告した。
最後に、疑問の口調で尋ねた。「古川様は...人違いをされたのではないでしょうか?」
清森は彼の質問に答えず、夏目維順の最近の写真を送るよう指示し、引き続き夏目維順を監視するよう命じてから、電話を切った。
彼は心の中の感情を隠し、トレイを持って書斎へ上がった。
真雪はくつろいだ姿勢でカウチに半身を横たえて本を読んでいた。物音がしても顔を上げることなく、落ち着いて本のページをめくった。
清森はトレイを彼女の横の小さな丸テーブルに置き、それから本棚に歩み寄って本を一冊選んだ後、再び真雪のところへ戻り、彼女が横たわっているカウチの背もたれに寄りかかるようにして絨毯の上に座った。
「フルーツを食べない?冷蔵庫のミルクレープ、まだ手をつけてないけど、抹茶味は好きじゃない?」
真雪は本を置き、体を起こして足を組み、小さな丸テーブルに向かった。彼が先ほど持ってきたトレイの小さなフォークを取り、抹茶ミルクレープを少し刺して、細かく味わった後、頷いた。「昨日食べるの忘れてた。美味しいね」
「唐田秘書が最近オープンしたばかりのベジタリアンレストランを勧めてくれたんだ。君が気に入りそうだから、今度連れて行こうか?」
「いいわね」真雪は頷き、リンゴの一切れをフォークで刺して彼の口元に差し出した。「ほら、美味しいものを私のことを考えてくれたご褒美よ」
清森は口を開けてリンゴを食べ、にこやかに言った。「当然だよ。美味しいものがある時だけじゃなく、夜にベッドの中でも特に君のことを考えてるよ」