第316章:たった一つの真理……妻は常に正しい

古川真雪は頷いて、素直に答えた。「はい、時間があれば必ず伺います。ただ最近はレストランのオープンで忙しくて、なかなかお邪魔する時間がなくて」

「若い夫婦は一緒に過ごす時間を多く取るべきよ。時間があれば一緒に散歩でもして。いつも仕事ばかりで、二人の時間がないと自然と夫婦の間に溝ができるものよ。まあ、夫婦喧嘩は犬も食わないっていうし、仲良く暮らすことが大事よ」

大谷夫人もニュースで二人の離婚のことを知っていたが、離婚後は二人に会う機会がなく、仲直りを勧める機会がなかった。

やっと公園で出会えたので、若い夫婦に仲良くするよう親身になって諭した。

久保清森は老婦人の慈愛に満ちた言葉を聞いて、整った顔に優しい笑みを浮かべた。「ご心配ありがとうございます。私と真雪はこれからもしっかり暮らしていきます」

「そうそう、若い夫婦なら喧嘩くらいするものよ。昔は私と主人もよく揉めたわ。お互い一歩譲れば何とかなるのよ」

大谷夫人の横に立っていた大谷さんは頷いて、清森に言った。「奥さんと暮らすには、たった一つの真理がある…奥さんは常に正しい!わかるかね?」

清森は教えを受けたように頷いた。「おっしゃる通りです」

「さあ、若い二人の時間を邪魔しないでおこう」

大谷さんは二人に手を振り、別れを告げると妻の手を取って去っていった。

清森と真雪はその場に立ち、二人が互いの手をしっかりと握り合い、年老いた姿が視界から徐々に消えていくのを見つめていた。

視線を戻した時、真雪は温かい大きな手が自分の手を握るのを感じ、驚いて横目で見た。

夕陽の名残りが彼の顔に照り、淡い輝きを放ち、比類のない柔らかさを生み出していた。

彼が真雪を見つめる黒い瞳には光彩が揺れ、その中には非常に深く濃密な感情が煌めいていた。

「真雪」

彼は足を踏み出し、真雪の手を引いて歩道を進んだ。

「うん?」

真雪は彼が握る手を振りほどくことなく、温かい大きな手に自分の小さな手を包まれるままにした。

「年を取ったら、僕たちも大谷さん夫妻のように仲良くできたらいいな。そして今みたいに君の手を握って歩けたらいいな」

真雪は俯いて、二人の足元の揃った歩調を見つめ、唇を引き締めて微笑み、目には柔らかな笑みが舞っていた。