映画館内にはVIP上映室が設けられており、通常の上映室との違いは、VIP上映室内の設備がより高級で、座席もより広々として快適なことだった。
上映室内には全部で四列しかなく、各列には六席しかない。古川真雪と久保清森は特に最後列の中央に席を予約していた。
VIP上映室内は満席ではなく、広々とした上映室内にはわずか十人ほどが座り、これから上映される映画を楽しんでいた。
二人が座ってから五分ほど経つと、上映室内の照明が徐々に暗くなり、前方の大きなスクリーンから投影される光だけが残った。
『因縁』と同時期に公開されたこのラブストーリーの売上は『因縁』よりも良く、その大きな理由の一つは、この映画が『因縁』よりもかなり過激な描写を含んでいたからだった。
映画が二十分ほど経過したところで、ベッドシーンが登場し、真雪と清森の前に座っていたカップルは思わず熱い抱擁とキスを交わし始めた。
真雪はポップコーンを抱えながら表情を変えることなく前方のスクリーンを見続け、まったく影響を受けていないようだった。
対照的に、彼女の隣に座っている清森はやや落ち着きがないように見えた。
スクリーンから投影される光が彼の顔を照らし、彼の眉間に浮かぶかすかな欲望の兆しをはっきりと浮かび上がらせていた。
明らかに、彼は前のカップルのように...カップル同士がするべきことをしたいと思っていた。
数分後、真雪がまったく動じる様子を見せないことに、清森はついに抑えきれなくなり、ポップコーンを数粒持っている真雪の手を握った。
真雪は不思議そうに横目で彼を見て、少し眉を上げた。「食べたい?」
彼女は実際には清森がポップコーンを食べたいのかと尋ねていたのだが、頭の中で別のことを考えていた清森は別のことを想像していた。
彼はうなずき、小声で答えた。「うん。」
真雪は手を引き、手にあったポップコーンを口に入れ、そして抱えていたポップコーンを二人の間に置いた。彼がポップコーンを取りやすいようにするためだ。
しかし清森はポップコーンを見向きもせず、真雪に手振りで顔を近づけるよう合図した。彼女に言いたいことがあるようだった。
真雪は深く考えず、清森が映画のプロットについて話し合いたいのだろうと思い、顔を彼の方に近づけた。