映画は一時間半の長さで、終わると共に、映画館内の照明が徐々に明るくなった。
古川真雪は俯いたまま久保清森に手を引かれて映画館を出た。その整った眉目には、かすかな恥じらいが漂っていた。
彼女は道中ずっと黙ったまま清森の側に寄り添い、映画館を出て、エレベーターで地下駐車場へと向かった。
二人が車に乗り込むと、清森はようやく抑えていた笑みを口元に咲かせた。まるで獲物を手に入れた猫のように、狡猾で満足げな笑みだった。
「なるほど、カップルたちが映画館で映画を見るのを好むわけだ。こんなに心地よいことだったとは」
清森の意地悪な感想に、真雪は苦笑いを浮かべた。彼女は艶やかに清森を睨みつけたが、恥ずかしさのせいか、その少し上向きの桃花眼には人の心を惹きつける色気が漂い、一挙手一投足に媚態が現れていた。
清森は彼女のその魅惑的な眼差しに心をくすぐられ、思わず身を乗り出して再び彼女にキスしようとした時、真雪は素早く顔を窓の方へ向け、小声で呟いた。「今夜の天気はとても良いわね」
「……!」
二人はまだ地下駐車場にいるのに、彼女はどうやって今夜の天気が良いと分かったのだろう?
彼女の行動に清森は可笑しくなり、諦めて親しげに彼女の頭を撫でると、アクセルを踏んで車を走らせた。
二人が久保家に着いたのはもう11時近くだった。清森が車を車庫に停めた後、二人は車から降りて家に入り、階段を上がって各自の部屋へ向かった。
真雪が部屋に戻る前に、清森は素早く身をかがめて彼女の額にキスをし、それから手を振って「おやすみ」と言った。
真雪は思わず微笑み、部屋に戻るとバスルームでシャワーを浴び、フェイスマスクをして、そしてベッドに上がってテレビをつけた。
今日は一日中寝ていたせいで、今は全く眠気がなかった。テレビを見て時間を潰すしかなかった。
テレビチャンネルはドキュメンタリー番組が放送されているところで止まっていた。真雪はリモコンを置いて画面を見つめた。
しばらくすると、ベッドサイドテーブルに置いてあった彼女のスマホがブルブルと一度振動した。手に取ってみると、藤野旭からWeChatのメッセージが届いていた。
【新しく公開されたあのラブストーリー、良かった?週末に彼女と見に行こうと思ってるんだ】