第348章:

「ふざけないで、自分の部屋に戻って寝なさい」

古川真雪に押しのけられた久保清森は諦めきれず、再び手を伸ばして、何の苦もなく真雪を自分の腕の中に引き戻した。

「今夜、俺がどれだけ信頼できるか証明するって約束したじゃないか」

彼の低く掠れた声が真雪の耳元で響き、言い表せないほどの甘い誘惑を含んでいた。

「変なことしないで、早く自分の部屋に戻りなさいよ」

「復縁後の初デートだから、当然特別な形でこの日を締めくくらないとね」

清森はまだ真雪を説得して親密なことをしようと理由を探していた。

言葉が終わるとき、彼の頭に唐田浩良が以前言ったことが突然よぎった……

「女性って多くの場合、結構気取るものだよ。口では嫌だと言いながら、実は体は正直なんだ。こういう時は強引さと優しさの両方が必要だ!」

「思い切って強引に攻めて、男の度胸を見せつけるんだ!」

頭の中でほんの一秒考えただけで、清森は浩良の提案を採用すべきだと思った。

心の高鳴りを抑えきれず、体を翻して真雪を自分の下に押し倒した。

真雪が手を伸ばして清森を押しのけてベッドから降りようとした時、不意に彼の大きな体に押さえつけられた。

清森は優しく動きながら、真雪の温かい唇に軽くキスをした。

「真雪、君と愛を語りたい、ベッドの上から心の中まで」

彼の魅惑的な薄い唇が真雪の耳に触れ、低く甘い声が彼女の耳に確かに届き、最後には胸まで広がって、ときめきを引き起こした。

静かな夜空は華やかさで満ちあふれ、柔らかな月の光が水のように降り注ぎ、大地を照らしていた。

午前2時半、清森がようやく真雪を解放すると、彼女はすぐに深い眠りに落ちた。

しかし、眠りについてから30分も経たないうちに、真雪がベッドサイドテーブルに置いていた携帯電話が狂ったように振動し始めた。

清森はベッドサイドテーブルに手を伸ばして携帯を取り、着信表示を見てから電話を切った。

しかし相手は真雪と連絡を取ることに固執していたようで、電話が切られるとすぐにまた掛けてきた。

今度は眠っていた真雪も目を覚まし、小さな声でつぶやいた。「誰からの電話?」

「溝口律毅だ」

疲れのせいで、真雪の頭の回転は遅く、数秒後にようやく清森が言った人物の名前を思い出した。