第358章：だから……キツネ女に手を出すな

「清森、私の手も冷たいわ、寒いの！」

久保清森：「あ、そう！」

彼は全く気にしない様子で頷いて返事をした後、冷静に視線を逸らした。

綾部久辰は思わずぼやいた。「お前って本当に色恋に弱いな」

数人の友人たちが軽く笑い声を上げた。

結婚式はそれほど時間が経たないうちに始まった。横山臨斗の結婚式はとても盛大で、会場には多くの来賓が集まっていた。

古川真雪と久保清森が座っているテーブルはステージに近く、この席からの角度は絶好で、ステージ上の新郎新婦の様子がはっきりと見えた。

新郎と新婦が指輪を交換する時、清森は真雪の手を握り、指先が無意識に真雪の右手の指輪の上を優しく撫でていた。

彼は少し頭を下げ、薄い唇を真雪の耳元に寄せ、優しく囁いた。「次に参加する結婚式は、僕たちのものであってほしいな」

真雪は視線の端で、清森の漆黒の瞳が星のように輝いているのを見た。彼女を見つめる彼の表情は誠実で集中していた。

温かい感情が彼女の胸の中から湧き上がり、すぐに胸全体に広がっていった。

彼女は微笑み、清森の手を握り返したが、口では冗談めかして言った。「子遠は婚約中よ」

「じゃあ、彼が結婚する前に僕と結婚してくれる？」

真雪はためらうことなく答えた。「嫌よ」

「……！」清森は不満そうに口を尖らせた。

真雪は思わず笑みを浮かべ、再びステージ上の新郎新婦に視線を戻した。

結婚式が終わる頃には、すでに9時半になっていた。真雪は帰る前に清森に少し待っていてほしいと言い、トイレに行く必要があった。

彼女はゆっくりとトイレに向かった。先ほどかなりお酒を飲んだせいで、頭の中は心地よい空虚感に包まれていた。

彼女はトイレの洗面台の前に立ち、優雅な動きで化粧を直した。

口紅を塗り終えてクラッチバッグに戻そうとした時、突然トイレのドアが開いた。

真雪は目の前の鏡を通して、ローズレッドのひざ丈ドレスを着た白川思花がドアを開けて入ってくるのを見た。

思花は優雅な足取りで真雪の横に歩み寄り、落ち着いた様子でバッグから口紅を取り出して化粧を直し始めた。

彼女はバッグを開けるために目を伏せた時、真雪の右手の指輪に目が留まり、口元に皮肉な笑みが浮かんだ。

「古川真雪、あなたみたいな尻軽女には専門用語があるの、知ってる？」