「うん、とても楽しかったわ」
「若い男の子は好き?」
「好きよ」
久保清森は彼女の手のひらを優しく撫でながら、微笑みつつ柔らかな声で言った。「もし君が好きなら、今度は私たちも小さなやんちゃ坊主を作って一緒に遊ばせようか」
古川真雪の笑顔が一瞬止まった。明らかに清森の言葉に対して無防備だった。
清森との子供を持つこと?
かつて二人が結婚した時、彼女は確かに清森の子供を身ごもることを切望していた。
しかし時間の経過とともに、心の中の願望も徐々に消えていき、この件については...彼女は本当に何の計画も持っていなかった。
真雪の眉間に思わず戸惑いの色が浮かんだのを見て、清森は彼女の心中を察したが、すぐに答えを求めることはしなかった。
結局のところ、妻をようやく取り戻したばかりだ。焦ってはいけない、一歩一歩進めていこう。
彼は自然に話題を変え、尋ねた。「夕食は食べた?」
「うん、さっきおじさんとおばさんとおばあちゃんと一緒に食べたわ。あなたは?」
「まだなんだ。下に降りて一緒に食べない?」
「うん、いいわよ」
清森は片手でギターを持って立ち上がり、まだ床に座っている真雪に右手を差し出した。
真雪が彼の大きな手に右手を乗せると、彼は軽く引っ張って床に座っていた真雪を立たせ、そのまま彼女の手をしっかりと握り続けた。
……
真雪は清森と一緒に湯川ホールディングスの社長の結婚式に出席することを承諾した。久保家には華やかなドレスがなかったため、昼間に彼女は白川悠芸と一緒に買い物に出かけ、美容院にも立ち寄った。
彼女が選んだドレスは紫色で、それに合わせて清森は特別に紫色のネクタイを選んだ。
清森が準備を整えた後、真雪の部屋のドアを軽くノックした。その時、真雪もすでに準備ができていて、ドアを開けて外にいる清森に微笑みかけた。「出発する?」
「うん」
清森はうなずき、素早く視線を落として彼女の両手を見た。
彼女の腕には美しいダイヤモンドのブレスレットが輝き、指には二つの指輪があったが、昨日自分が彼女に返したダイヤの指輪はどこにもなかった。
「真雪、指輪を変えてみない?君が持っている6カラットの洋梨型ダイヤの指輪なら、今日の装いにもっと合うと思うんだけど」
真雪は彼の遠回しな言葉の裏に隠された意図を聞き取らないはずがなかった。