彼女の白い頬は淡い桃色に染まり、ソファーに畳まれていた服を素早く抱え上げると、足早に書斎を出て浴室へ向かい、着替えた。
彼女が着替えを終えて浴室から出ると、ちょうど久保清森がダイニングから出てきて、彼女の方へ歩いてくるところだった。
清森は古川真雪の前に立ち止まり、面白そうに尋ねた。「どうして僕に誕生日プレゼントを要求しないの?」
彼の質問に真雪は思わず笑みを漏らした。彼女は言いたかった……実はあなたが最高の誕生日プレゼントよ、と。
ただ、考えてみるとそんなことを口にするのは恥ずかしい気がして、結局、口元まで出かかった言葉を飲み込み、代わりに右手を清森の前に差し出して、「私の誕生日プレゼントは?」と応じた。
清森の唇に春の微風のような優しい笑みが浮かんだ。彼は左手を真雪の差し出した右手に重ね、そのまま彼女の手をしっかりと握った。
「僕自身を誕生日プレゼントとして君にあげるけど、いいかな?」
彼の笑顔が広がるにつれて、その美しい目は三日月のような形になり、とても魅力的だった。
真雪はわざとらしく嫌そうな顔をして口を尖らせた。「なんだか損した気分ね」
清森は彼女の手を引いてリビングへ向かいながら答えた。「どうして損なの?イケメンで、稼ぎもいいし、何より、いつでもどこでも君に幸せを与えられるのに、どうして損なんだい?」
真雪は彼がまた下ネタを言おうとしているのを聞き逃さなかった。彼女は口元を緩め、「大きなお荷物が増えた気分よ」と答えた。
清森は真雪の手を離し、代わりに腕を彼女の肩に回して、軽く力を入れて彼女を抱き寄せ、甘やかすような口調で言った。「君は十数年間僕の小さなお供だったんだから、今度は僕が十数年間君の大きなお供になって、バランスを取ろうよ」
「それでもやっぱり損した気分」
「じゃあ、僕のことを『損』って愛称で呼んでみたら?今夜は特別に君に損をさせてあげるよ」
「……!」
真雪は嫌そうに彼を横目で睨み、どうしてこの男は何を話題にしても下ネタに持っていくのか理解できなかった。
二人が取り留めのない会話をしながら歩いていると、すでにリビングに到着していた。
真雪の視線はリビングのテーブルに置かれた大きな箱に注がれた。
箱は美しい包装紙で包まれており、その形から見て、真雪はバイオリンケースではないかと推測した。