招かれざるリアリティショー_2

この番組の六人のゲストの中で、篠田佳子の人気は群を抜いていた。

子役としてデビューして以来、彼女は一度も世間の視界から消えたことがない。数々のトップスターと共演し、業界では誰もが認める仕事の鬼として知られていた。さらに人々を感嘆させたのは、キャリアの絶頂期に、突如として結婚を発表したことだった。

佳子の夫は、ネットユーザーなら誰もが知る名優の奥寺光(おくでら ひかる)。彼は富豪の家に生まれ、資産は何十億を超える。二人は共演をきっかけに恋に落ち、交際が発覚すると、大量のカップルファンから祝福の声が寄せられた。まさにゴールデンカップルと呼ぶにふさわしい二人だった。

結婚後、佳子は徐々に芸能界から距離を置き、家庭に専念していた。新しい仕事は受けず、公の場に姿を見せることも稀だった。そんな彼女が、この番組に出演するとは、誰もが予想していなかったのだ。

【美女を拝ませてくれて番組には感謝しかない】

【感謝+10000】

【始まって結構経つのに、長谷川一樹とあの義姉さん、まだ出てこなくね?】

【正直、出てこないでほしい。あいつの顔は見たくない】

……

その頃、長谷川一樹と朝比奈初はまだ車の中にいた。

二人はバスに乗り込んでから、通路を挟んで別々の席に座り、道中、一言も口を利いていない。

皆がバスを降りていくのを見て、一樹は隣の席に座る初へと視線を向けた。彼女は目を閉じ、耳にはワイヤレスイヤホンが差し込まれている。

一樹は立ち上がった。その長身が、彼女に差し込む光の半分を遮る。彼は眼下の彼女を見下ろし、冷ややかに声をかけた。「おい、降りるぞ」

初は眉をひそめ、ゆっくりと瞼を開いた。不意に、一樹の視線と真正面からぶつかる。

立ち上がる前、初は彼を見上げ、親切心から忠告した。「私への態度は考えた方がいいわよ、生意気な義弟くん?」

一樹は嫌悪感を露わにする。「馴れ馴れしくすんな」

「その態度で、この後ずっと私と番組を収録するつもり?」

初はワイヤレスイヤホンを外し、ゆっくりと言葉を続けた。「今のうちに、よく考えておくことね。あなたは注目される公の人間。私はどうせ素人だから、あなたたちがやってるみたいな『キャラ作り』ごっこに付き合う気はないわ」

彼には、多かれ少なかれ、アイドルとしてのプライドがあるはずだ。でなければ、皆が降りた後も、わざわざ自分を待っているはずがない。

初が、最後の出演者として姿を現した。まずカメラに映し出されたのは、彼女の細くしなやかな脚だった。カメラは下から上へとゆっくりとパンし、最後にその顔を捉えた。

白いフレンチレトロなロングドレス。身体にフィットしたデザインは、彼女のしなやかな曲線美を完璧に描き出している。豊かなコーヒー色の巻き髪は右肩に流され、頭には黒いベレー帽。鎖骨のあたりで、ネックレスが太陽の光を反射して、かすかにきらめいていた。

【最後のペア、きたあああ!!!】

【うぉっ!長谷川一樹の義姉さん、めちゃくちゃ若くね!?】

【ぶっちゃけ、一樹の義姉さん、ガチで綺麗なんだが。惚れた】

【綺麗だから何だってんだよ。どうせ顔だけの置物だろ】

【どこがだよ?顔、白粉塗りたくってんじゃね?不自然な白さだろ】

【綺麗とか言ってる奴ら、目ぇ腐ってんのか?うちの佳子ちゃんの方が百万倍かわいいわ】

【素人とスターを比べんなよ。格が違うだろ、格が】

……

朝比奈初は、コメント欄で何が起こっているのか知る由もない。まさか自分の登場シーンだけで、トレンドのトップに躍り出ることになろうとは、夢にも思っていなかった。

初の登場と共に、ネットユーザーの間では連鎖反応が巻き起こる。彼女が一体どんな男と結婚したのか、その好奇心は、燎原の火のごとく燃え広がっていった。

ライブ配信は、今まさに熱を帯びて進行していく……

三組のゲストは、番組が用意したブラインドボックスを引くことになった。これが、彼らがこれから過ごす住居を決定する。

全ての組に選択の機会が与えられるよう、番組側は五つのブラインドボックスを用意した。

皆、暗黙の了解で、バスを降りた順番で箱を選んでいく。最初の組からは、斎藤彩(さいとう あや)が代表として進み出た。彼女は一番近くにあった箱を選ぶと、中からカードを取り出し、そっと開いて中を覗き込む。

弟の斎藤央が横から歩み寄り、二人は肩を並べて立った。央はすっと腕を伸ばし、姉の頭上にかざして日差しを遮る。そして、優しい声で尋ねた。「姉さん、俺たち、何引いた?」

すでに結果を知っている彩は、にっこりと笑い、カードを広げて彼に見せた。

央はカードを覗き込み、ぱっと目を輝かせる。その顔に、穏やかな笑みが広がった。「すげえじゃん、姉さん」

彼らが引き当てたのは、2LDKの平屋建ての家だった。その結果に満足し、二人は顔を見合わせると、息の合った様子でハイタッチを交わした。

【央くん、優しくて気が利くなあ。姉さんのために日除けしてあげてるとか、神かよ。こんな弟が欲しい】

【央くんの姿を見た後、振り返って隣にいたウチの弟の背中をひっぱたいた。同じ弟なのに、なんでこうも違うのか】

【これぞ「よその家の弟」ってやつだな】

【このペアの雰囲気、めっちゃ好き。姉弟仲良くて、見てるだけで和む】

二組目は、篠田佳子が箱を選んだ。彼女が選んだ二番目の箱。そこから出てきたのは、この村で唯一の、中庭付きの邸宅だった。

佳子の運の強さは、つとに有名だった。彼女と共演した俳優のほとんどが、その後ブレイクを果たしている。夫である奥寺光もまた、彼女との共演作で一躍その名を轟かせ、トップスターの仲間入りをし、ついには主演男優賞まで手にしたのだ。

以前、奥寺光はインタビューで、「佳子は僕の幸運の女神。彼女がいなければ、今の僕はいません」と語っていた。

果たして、その言葉通りだった。彼女が手を伸ばせば、いとも容易く最も豪華な邸宅を引き当ててしまう。他のゲストたちからは、羨望の眼差しが注がれた。

【やべえ!幸運の女神って、事務所が作ったキャラ設定だと思ってたけど……マジだったんだな。信じます】

【姉さん、次回のロト、何買えばいいっすか】

【この姉さんの唯一の不運は、長谷川一樹のペアと同じ番組に出ちまったことだろうな】

【幸運の女神様、どうか私にもご加護を……】

【佳子様、どうか単位をください、お願いします】

そして、最後のプレッシャーが、三組目にかかる。長谷川一樹が自ら進み出て、残った箱の中から、一番手前のものを選び、カードを確かめた。

【え、何?固まったんだけど!?】

【ライブ画面が動かねえぞ?】

【俺のPCも止まった……】

【一樹が何引いたか見えたやついない!?誰かコメントで教えてくれ!】