仕事始めはサボりから

【この二人、何してんの。デートにでも来たつもりか?】

【「お飾り」っていう言葉を、ここまで地で行くとはな】

【カメラの前でこれだぞ。裏では、一体どれだけ怠けてるんだか】

【番組スタッフ、仕事しろ。なんでこんな奴らを放置してんだ?】

ちょうど斎藤央がナツメの実を打ち落とす練習をしていた時、みんなが気づかないうちに、朝比奈初と長谷川一樹はこっそり話をしていた。

朝比奈初は、すっと体を傾け、長谷川一樹の方へと身を寄せた。そして、ひそやかな声で彼に囁きかける。「ねえ、ちょっと。ゲーム、しない?」

「ゲーム?」長谷川一樹は、訝しげに彼女を一瞥した。

こんな時にゲームなんて、彼女はどうしてそんなことを言い出せるのか。

長谷川一樹は彼女を無視したくて、すぐに視線を逸らした。

だが、朝比奈初は諦めない。再び、彼に顔を寄せて言う。「ゲームよ。負けた方が、働くの。どう?」

「くだらない」彼は、侮蔑の色を隠そうともしない。

朝比奈初は、挑発的に眉を上げた。「あら、もしかして、私と勝負するのが怖いとか?」

見下されるのは、我慢がならない。その一言に、長谷川一樹は、思わず口を開いていた。「……何をだよ」

「じゃんけんよ」

「……」

彼らは一回勝負で決めることにした。朝比奈初はグーを出し、彼はチョキを出した。結局、朝比奈初は簡単に長谷川一樹に勝った。

【すげえwwwwwwそんなのアリかよ】

【こいつら、昼飯を食う気はないのか?】

【このトラブルメーカー二人、仕事そっちのけでじゃんけんしてるとか、マジで終わってんな】

【誰かー!こいつらをどうにかしてくれー!】

朝比奈初は、握っていた拳を開くと、くるりと身を翻し、竹竿を長谷川一樹へと差し出した。勝者の、余裕に満ちた挑発。「さあ、坊や。お仕事の時間よ」

長谷川一樹はさっき何が起きたのかまだ理解できていなかった。どうして負けたんだろう?

彼は呆然とした表情で朝比奈初から竹竿を受け取り、黙ってナツメの木の側に歩いて行き、準備を始めた。