第21章 誰かが喧嘩してる?

「どうして負けたんだろう?」斎藤彩は独り言を呟き始めた。今でもこの現実を受け入れられないようだった。

小さな任務のために、体中が筋肉痛になり、爪まで傷めてしまったのに、順位は最下位だった。

斎藤央は横のソファに座り、目を閉じていた。明らかに疲れ果てて話す気力もないようだった。

彩が隣で文句を言うのを聞いて、彼はようやくゆっくりと目を開け、無表情で言った。「もう終わったことだろ。今さらくよくよしても意味ないじゃないか」

「納得いかないのよ。長谷川一樹のチームに負けるのはまだしも、なんで篠田佳子にまで負けなきゃいけないの?」

一樹たちのチームは任務にあまり熱心ではなかったが、朝比奈初という知的担当がいたので、彩は彼らに負けても恥ずかしくないと思っていた。

佳子のチームに負けたことで、彩は本当に気分が悪かった。「私たちは二人一組だったのよ...あの朝比奈だか何だかって子は、他の人を手伝いに行ったりして。これってゲームのルール違反じゃないの?」

彩のとりとめのない愚痴を聞いていた央は、我慢の限界に達した。彼は突然姿勢を正し、平然と言った。「でも彼女は私たちも手伝ってくれたじゃないか」

彩はその言葉を聞いて、冷笑した。「央、あなたはどっち側なの?」

彼も遠慮なく返した。「お前こそ、都合のいいことしか言わないな」

「私が都合のいいこと?」彩は彼が初の味方をするとは思わなかった。胸の中に言い表せない不快感が広がった。「あなたが役立たずだからでしょ。クワひとつ直せないんだから。そういうことなら、明日もこんな力仕事だったら、自分でなんとかしなさいよ。私に助けを求めないでね」

疲れて眠たかった央だったが、彼女のそんな投げやりな態度を見て、怒りが一気に沸き上がった。「爪が傷ついただけじゃないか、大げさだな。自分に聞いてみろよ、この二日間、お前は何をしたんだ?」

番組収録のこの二日間、央は出来ることは全てやり、彼女に十分優しくしたつもりだった。しかし彼女のお姫様病がまた発症したようだ。

央は冷たく鼻を鳴らし、続けた。「最初に一緒にバラエティ番組に出ようと言い出したのもお前だろ?」

「……」

初はあの夕食を食べるために、こんなに遠くまで歩いて帰らなければならないとは思ってもみなかった。