朝比奈初は少しも大げさに言わなかった。「若返っただけじゃなくて、私たち二人が一緒に出かけたら、きっと皆さんはお母さんが私のお姉さんだと思うでしょうね。」
長谷川の母はまだ50歳くらいで、普段からスキンケアに気を使っていたため、肌にたるみや下垂の跡は見られなかった。少し化粧をして細部を整えれば、彼女の本当の年齢など全くわからないだろう。
何より彼女の性格が少女のようで、この顔で外出すれば、20代だと言っても信じる人がきっといるだろう。
長谷川の母の瞳には満足の光が満ちていたが、服装に注意を向けると、この美しいメイクに比べて身につけている服が少し合わないように感じ始めた。
「この服、古臭く見えないかしら?別のに着替えた方がいいかな?」
朝比奈初は注意深く彼女を見て、真剣に言った。「これで十分素敵ですよ。若々しく見えます。」
長谷川の母は白い丸首のニットを着て、下には薄いグレーのスカートと黒の小さなヒールを合わせていた。
彼女のこのコーディネートはとても若々しく、少しも老けて見えなかった。
朝比奈初はクローゼットが前方に見えたので、そちらに歩いていった。「上着をもう一枚お探ししましょう。そのトップスだけだと薄すぎて、寒くなりそうです。」
今の気温はまだ大丈夫だが、昼に太陽が出ていれば実際にはかなり暑くなる。
朝比奈初が長谷川の母のクローゼットを開けると、彼女の服がこんなにたくさんあるとは思わなかった。四季の様々なスタイルがあり、靴やバッグだけでも壁一面を占めていた。
長谷川の母は初が入口に立ったまま中に入らないのを見て、好奇心を持って近づいてきた。「散らかっていて驚いたかしら?」
朝比奈初は微笑んだ。「散らかっているというわけではないですが、お母さんのクローゼットがこんなに充実しているとは思いませんでした。」
長谷川彰啓と結婚してから、朝比奈初も節制なく買い物をしていた。
彼女は彰啓の顔となる妻なので、当然ながら装いも見劣りしてはならず、何でも最高のものを選ぶ必要があった。毎日違う服を着ることができるほどだった。
今日、長谷川の母のクローゼットを見学する機会を得て、初めて「井の中の蛙、大海を知らず」という言葉の意味を実感した。