第111章 大げさだった

年配の刺繍職人は彼女が手を止めたのを見て、前に歩み寄り、朝比奈初が刺したばかりの部分に手を触れ、思わず彼女を褒めた。「素晴らしいわ、あなた上達が早いわね」

彼女は微笑んで、謙虚に言った。「いいえ、先生の教え方が上手なだけです」

初はまだ始めたばかりなのに、こんなにも糸を密に刺せるとは思いもよらなかった。

年配の刺繍職人が特に問題点を指摘しなかったので、初はそのまま刺繍を続けた。

「以前に刺繍を習ったことがあるの?」

初は首を振り、静かに答えた。「いいえ、ありません」

彼女はこういうものに触れたことがなかったが、初めてここに来て、先輩から学ぶ機会があるだけで十分満足していた。

年配の刺繍職人はそれを聞いて少し驚いた。

「初めてなのにこんなに上手だなんて、何か基礎があるのかと思ったわ」そう言いながら、刺繍職人は思わず打ち明けた。「私が初めて刺繍を習った時は、針の持ち方も分からず、糸端の始末もできなくて、めちゃくちゃだったのよ」

【誰かさんが私を羨ましがってるの言わないけど泣いちゃう、朝比奈さんのその手ちょっと貸してくれない?】

【これこそ手の本来の使い方だよね、私の手はトランプしかできないし、運も最悪だしwwww】

【才能の重要性がよく分かるね、それに朝比奈さんの学習能力すごく高いよ】

【天照大御神様が人間を作る時、私は端材で作られたんじゃないかって日々疑問に思うよ泣】

【さすが朝比奈さん、目で見て理解したらすぐに手が動くんだもん。私なんて目では分かっても、いざ手を動かすと全然できないよ】

初:「先生、まだ早すぎますよ。こんなに少ししか刺してないですし、全部終わる頃にはもっとぐちゃぐちゃになってるでしょうね」

彼女は伝統工芸のようなものに特別な思い入れがあったので、さっきの説明をかなり真剣に聞いていた。針を通す時も頭で考えてから、こうすべきだと確信してから刺していた。

好きなものに対しては、彼女はいつも慎重だった。

「先生はこの刺繍工房にどれくらいいらっしゃるんですか?」

初は彼女の年齢が五、六十歳くらいだろうと推測した。この年齢でまだ刺繍工房にいるということは、かなり長く働いているのだろう。