第110章 彼女は生まれつき才能がある

長谷川の母は机の上の携帯電話を手に取り、登録されていない見知らぬ番号をざっと見て、無気力に電話に出た。

「どちら様ですか?」長谷川の母の声は怠惰で、とても気楽そうで、ちょうど目覚めたばかりのような状態だった。

【朝比奈さんは姑に電話してるのかな?】

【急に気になったんだけど、朝比奈さんはなぜ姑に電話してるの?】

【でもさ、姑の声がちょっと適当に聞こえるね、なんか凄い人物って感じ】

【前のコメントの人、考えすぎじゃない?朝比奈さんはスタッフの携帯使ってるんだよ、姑は見知らぬ番号だから気にしてないだけかもよ】

【朝比奈さんと姑の関係が気になる、この姑は彼女に何か不満持ってるのかな】

朝比奈初は優しい声で口を開いた。「お母さん、朝比奈初です。」

長谷川の母はもともと眠そうな様子だったが、初の声が耳元から聞こえてきた時、思わず姿勢を正し、十二分の注意を払った。

初からのこの電話がなければ、長谷川の母は本当に眠りこけるところだった。

彼女は通話表示を見て、見知らぬ携帯番号だったので、好奇心を持って尋ねた。「あなた番組収録中じゃないの?どうして突然電話してきたの?」

長谷川の母はこの電話が番組側の仕掛けた課題だと思い、次の瞬間から自分の言葉遣いに気を配り始めた。

前回、長谷川一樹から電話があった時はそういう意識がなかったが、今日突然初から電話を受けて、他の要素も考慮するようになった。

初は食卓から立ち上がり、少し離れた静かな場所に移動してから口を開いた。「お母さん、お願いがあるんです。」

番組のカメラマンは分別があり、出演者のプライバシーを尊重して、わざわざ追いかけて撮影することはせず、ただ遠くから視聴者のために背中だけを撮影した。

【カメラマンさん、近づいて撮れないの?彼女たちが何を話してるのか知りたい】

【私も知りたいよねwww、想像するしかないか】

【やめてよみんな、他人の電話を盗み聞きするのは良くないでしょ】

【助けて、私おかしくなったのかも、朝比奈さんが電話してるだけなのに美しくて魅力的に見える】

【なんで私の電話まだ鳴らないの?朝比奈さんは私に電話するんじゃないの?】

【wwwww前のコメントの電話まだ鳴らないって言ってる人、昼間から素敵な白昼夢見てるね】

長谷川の母は聞いて、急に好奇心が湧いた。「どんなこと?」