第187章 寝相が悪い

目覚めたばかりの彼女は髪が少し乱れ、長いまつげの下には潤んだ大きな瞳があり、上がり気味の目尻には笑みが宿っていた。

朝比奈初と視線を交わしたその数秒間、彼の瞳孔はまるで無限に広がるかのようで、思考は目の前の光景に奪われていた。初が少し体を動かし、起き上がろうとした時になって、長谷川彰啓の意識は現実に引き戻された。

彼は手を下に移動させ、初の肩にかかった布団を引き上げて彼女に掛け直し、喉仏を軽く動かしながら、磁性のある優しい声で言った。「もう少し寝ていいよ。俺は会社に行ってくる」

初は目を少し伏せ、視線を布団の縁にある白く長い指に落とした。その指の半分ほどは布団の下に隠れていて、彼女の視線はちょうどその銀色の指輪に焦点を合わせていた。その表情には読み取りにくい感情が浮かんでいた。

しばらくして、彼女はゆっくりと目を上げ、ゆったりとした声で少し怠そうに言った。「お腹すいた。何か食べてからまた寝たい」

「ああ」彰啓はすぐに布団から手を離し、体を起こした。初にかかっていた影も一緒に消えた。

初が布団をめくって起き上がろうとした時、彰啓はしゃがみ込んで、彼女のスリッパを見つけ出し、足元に揃えた。

「急いでるの?もし時間があれば、一緒に何か食べない?」初はスリッパを履き、手を上げて前髪を後ろに流し、顔を上げて彰啓を見た。

彼はちょうど出かけようとしていたが、言葉を発する前に初が朝食を一緒に食べようと誘うのを聞いた。視線が交わった瞬間、彼は特に迷うことなく、軽く「うん」と答えた。

彼女は軽く頬を叩きながら、のんびりと言った。「じゃあ、もう少し待っててね。洗顔してくるから」

初が洗顔を終えて階下に降りると、彰啓はリビングのソファに座り、片手でノートパソコンを支えながら、頭を下げて真剣に仕事をしていた。

彼が仕事中だと分かったので、初はわざとリビングを避けてキッチンへ向かった。朝食にはトウモロコシと卵を蒸し、ミルクパンケーキを一皿作り、温かい牛乳も用意した。

ちょうど初が食事をテーブルに運んだ時、長谷川一樹も身支度を整えて階段を降りてきた。

彰啓がこの時間にスーツを着ているのに出かけず、くつろいでリビングに座っているのを見て、一樹の瞳には驚きの色が浮かんだ。「兄さん、家にいるのになんでそんな格好してるの?」