しかし彼らは朝比奈初の行動と、彼女がまだ話している様子から、このビデオ通話がまだ切れていないと判断できた。
初はパソコンを持ち上げ、会議テーブルに置き、先ほどの席に戻った。
彼女が先にパソコンを取りに行ったのは、後で切るのが便利だからだったが、この行動が他の人の目には、二人が親密に会話しているように映ってしまった。
初は長谷川彰啓を見つめ、小声で言った。「他に言いたいことある?なければ切るけど?」
「いつ帰るか聞かないの?」彰啓は少し首を傾げた。彼の突き出た喉仏が異様に目を引いた。
前回、彰啓は初にメッセージを送り、自分の帰りを待つように伝えたが、彼女は直接的な返事をせず、見たかどうかも分からなかった。
今日は彼も何故だか分からないが、おそらく会議を終えて眠気が完全に消え、今は暇だったので、ちょうどそのことを考えていたため、自分から尋ねてみたのだ。
初は平然と言った。「あなたがいつ帰ってきても構わないわ」
たとえ知りたくても、彰啓の現状を見れば、正確な時間は言えないだろう。
初にとって、無駄だと思うことはわざわざ口にする必要がなかった。
彰啓もこんなにあっさりした返事を予想していなかったかもしれないが、彼女は全く気にしていないようだった。
彼がしばらく黙っているのを見て、初は付け加えた。「安心して、家は何も問題ないから」
家には基本的に彼が心配することはない。
結局、長谷川一樹と長谷川千怜もこれだけ大きくなったのだから、彼が心配したくても手が回らないこともある。
現在、彼が唯一心配しているのは、初がこの生活に慣れていないのではないかということだった。
本来、バラエティ番組への出演も今日のことも彼女とは関係なく、契約書にもこれらの面倒な仕事をする義務はなかったのに、今や初を巻き込んで、彼の代わりに家のことを取り仕切らせている。
彰啓はしばらく黙った後、言った。「できるだけ早く帰るよ」
「うん、早く寝て、バイバイ」初は彼に手を振り、ビデオを切った。
初が手を振る様子を見て、外で見物していた数人が突然がっかりした様子で言った。「終わったの?」
「朝比奈さんはもうパソコンを閉じたよ」
「……」
初が部屋から出てくると、相馬秘書がずっと外で彼女を待っているのが見えた。
「お疲れ様です」初はパソコンを相馬秘書に返した。