実際、朝比奈初はあまり理解できなかった。
彼女が番組で知り合った篠田佳子は、自立して妹の面倒を見ることができる人だったのに、奥寺光が現れると、佳子の視線は彼から離れなくなり、まるで自分だけの世界に浸っているようだった。
このギャップは本当に大きすぎた。
篠田佳子は突然、朝比奈初の笑顔が読めなくなったような気がした。初には特別に大切にしているものがないように見えた。
佳子は初より5歳年上で、奥寺光と結婚して1年以上経っていた。芸能界では比較的早婚の部類に入る。結婚したのはちょうど佳子のキャリアが上昇期にあったときで、仕事と恋愛の間で、彼女は迷わず恋愛を選んだ。
この1年余り、彼女はほとんど芸能界から姿を消し、CMも映画も引き受けず、専業主婦として家庭に専念し、自分の持っている仕事の機会も光に譲るほどだった。
当時、彼女は自分が幸運だと思っていた。優しく細やかで、自分に尽くしてくれる光のような男性に出会えたことを。
結婚の話題になり、佳子は突然、初がどのようにキャリアと愛情のバランスを取っているのか気になった。
二人は向かい合って座っていて、距離があって話しづらかったため、佳子はわざわざ歩いてきて初の隣に座った。
佳子は初をちらりと見て、小声で尋ねた。「結婚してどのくらい?」
「だいたい1ヶ月くらいかな」あと数日で1ヶ月になる。
「まだ1ヶ月?」佳子は少し驚いた表情を見せ、初がまだ結婚して1ヶ月だとは思わなかった。「じゃあ、結婚式の後にハネムーンには行かなかったの?」
初は残念そうな様子を見せず、平然と言った。「婚姻届を出した翌日の夜に、彼は出張で仕事に行ったわ。今もまだ帰ってきていないの」
「……」佳子はこれを聞いて、どう返事をしていいか分からなくなった。
しばらくして、佳子はようやく話題を拾い上げた。「私と主人は結婚して1年以上になるけど、彼が撮影のために現場に入るたびに、私は数日おきに差し入れに行くわ」
初も佳子が自分に伝えようとしているメッセージが何となく分かった。外で働く男性に対して、積極的に関心を示すべきだというアドバイスだろう。
しかし初は佳子に逆に質問した。「男の人が忙しいのは別に構わないでしょう?少なくとも真面目に稼いで家族を養っているんだから、そうでしょう?」