第251章 彼女へのもの

小林由美子：「お義姉さんはもう飛行機を降りたころでしょう。彼女はまず番組の収録に向かうはずだから、食事をする時間がないでしょう。これを持っていって、少し腹ごしらえさせてあげて。」

「母さん、いつからそんな気遣いができるようになったの？他人のことを考えるなんて？」長谷川一樹は、ここ数日の母親の様子がどこか変だと感じていた。

最初は彼に服を買い、今度は朝比奈初のためにたくさんの食べ物を用意するなんて、一樹はますます理解できなくなっていた。

小林由美子は彼のそんな言い方を聞いて、すぐに不機嫌になった。彼女は一樹を睨みつけ、歯を食いしばって言った：「私が前はひどかったって言いたいの？」

「そういう意味じゃないよ。」一樹は頭をかきながら、口調を和らげた：「ただ、母さんがこういうことをするのが少し信じられないなって。」

それは昨晩、寝る前に長谷川彰啓が小林由美子に電話をかけ、朝起きたら朝比奈初のために一樹に持たせる食べ物を準備するよう頼んだからだった。

このことを思い出し、由美子はそっと首を振りながら感慨深げに言った：「私も少し信じられないわ。」

彼女は以前、彰啓がこんなに細やかな一面を持っているとは気づかなかった。

由美子はすべての食べ物を詰め終わると、一樹に手渡した。「待って、スープもあるわ。」

一樹は顔を上げて彼女を見つめ、あきらめた表情で言った：「なんでスープまで作ったの？」

「寒くなってきたから、温かいものを飲んだ方がいいでしょう。」

由美子は人に頼んでキッチンからスープを魔法瓶に入れてもらい、それも一樹に渡しながら指示した：「忘れないでね、お義姉さんに会ったらすぐに食べるように言って、絶対に番組スタッフに取られないようにね。」

「わかったよ。」

……

10時近くになり、朝比奈初は収録場所に到着した。

彼女は二番目に現場に到着した出演者で、最初に来たのは佐伯莉子だった。

おそらく女優という職業柄、莉子はチームを連れてきており、現場に着くとすぐに車の中でメイク直しを始めた。番組スタッフはまだ収録現場の準備や機材のテストをしており、別のグループは他の出演者を迎えに出発していた。

初が来たのを見て、副監督は折りたたみ式の屋外チェアを彼女に持ってきた：「朝比奈先生、どうぞ座ってお待ちください。」