第259章 弱すぎる

朝比奈初の要求を聞いて、長谷川一樹はまるで石化したかのようだった。

彼は呆然とした目で足元の薪の山を見つめ、思わず眉をひそめた。

ちょうどそのとき、篠田佳織が近くに立っていた。彼女は一樹が躊躇しているのは斧を持っていないからだと思い、道具箱から斧を取り出した。

佳織は彼の前に歩み寄り、手にした斧を差し出した。「ここに斧がありますよ」

佳織が差し出した斧を見て、一樹は平然と受け取り、彼女にお礼を言った。

しかし、彼が佳織から躊躇なく斧を受け取ったのは、斧にはある程度の重さがあり、長く持たせるのは申し訳ないと思ったからだ。今、斧を手にした彼はかえって躊躇していた。

生配信を見ている視聴者たちは、一樹が進退窮まった状況に陥っているのを見て、大いに楽しんでいた。

【篠田佳織のこの斧の渡し方、絶妙だね!!】

【第一回の長谷川一樹の薪割りを思い出すわ、忘れていた記憶が突然蘇ってきたわハハハ】

【お坊ちゃまの顔:一度恥をかいたら十分なのに、なぜまた俺を苦しめるんだ?】

【今回の薪は比較的小さいから、割るのは難しくないはず?もし一樹がまた割れなかったら、あの筋肉は無駄に鍛えたことになるね……】

番組収録に来たばかりの頃、一樹も斧を持って薪を割ろうとしたが、当時は力を尽くしても薪を割ることができなかったことを思い出した。

「……」なぜ料理教室では薪割りの授業がなかったのだろう。

一樹は斧を握りしめ、しゃがみ込んで木を地面に立て、斧を振り上げて力強く振り下ろした。しかし、木に当たらず、木が倒れてしまった。

初は彼の薪割りの動作があまりにも不器用なのを見て、思わず手で顔を覆った。

見ていられない。

一樹が再び挑戦しようとしたとき、初は突然近づいてきて、斧を手に取り、交代を申し出た。「私にやらせて、あなたはあっちで野菜を洗ってきて」

一樹は女性である彼女が薪を割ると言うのを聞いて、急に表情が冷たくなり、自分がとても情けないと感じた。

「やっぱり僕がやります」今日のカメラの有無に関わらず、一樹はこのような重労働を女性にさせるべきではないと思った。

初は彼から斧を受け取り、かがんで木を立て直し、斧を木の上に当て、そして斧を持ち上げて力強く振り下ろした。